産婦人科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:54

経口避妊薬の長期使用により、乳がん発症リスクがごくわずかに上昇(解説:矢形寛氏)-794

経口避妊薬と乳がんとの関連について研究したものはこれまでに複数存在するが、本研究はこれまでの中で一般市民を対象とした、最も規模が大きく質の高い前向き研究である。デンマークの登録データを用い、経口避妊薬の種類や使用期間、最近の使用の有無を詳細に検討している。

WHOの安全出産コーチング、その効果は?/NEJM

 世界保健機関(WHO)の安全出産チェックリスト(Safe Childbirth Checklist)について、実施促進のためのコーチングプログラムの導入効果を検討するクラスター無作為化試験が、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のKatherine E. A. Semrau氏らにより、インドの保健施設で行われた。非導入施設と比べて、導入施設は出産介助者の必須実施項目のアドヒアランスは向上したが、出産後7日以内の複合アウトカム(周産期死亡・母体死亡・母体の重度合併症)について有意差は認められなかった。資源が乏しい環境での施設出産率は過去20年間で劇的に増加したが、ケアの質は依然として差があり、死亡率は高いままだという。安全出産チェックリストは、質を改善するためのツールで、出産アウトカムの改善に関連する行為への系統的アドヒアランスを改善するとされていた。NEJM誌2017年12月14日号掲載の報告。

ホルモン避妊法、乳がんリスクが2割増/NEJM

 現代のホルモン避妊法をこれまで一度も使用したことがない女性と比較し、現在使用中または最近まで使用していた女性において、乳がんのリスクが高く、しかも使用期間が長いほどそのリスクは増加することが明らかとなった。デンマーク・コペンハーゲン大学のLina S. Morch氏らが、同国の女性を対象とした前向きコホート研究の結果を報告した。これまでに、エストロゲンは乳がんの発生を促進し、一方でプロゲスチンの役割はより複雑であることが示唆されていたが、現代のホルモン避妊法と乳がんリスクとの関連はほとんど知られていなかった。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。

乳児のインフル、妊産婦のワクチン接種で予防可能か

 生後6ヵ月までの乳児は重度のインフルエンザ合併症リスクが高いが、インフルエンザワクチンを接種するには早過ぎる。今回、日本の前向きコホート研究で、母親のインフルエンザワクチン接種により乳児のインフルエンザが減少することを、大阪市立大学の大藤 さとこ氏らが報告した。著者らは「今回の結果は、妊産婦が幼児を守るためにインフルエンザワクチン接種を受けるべきであることを示唆する」としている。The Journal of infectious diseases誌オンライン版2017年12月5日号に掲載。

妊娠中のビタミンD補充は有益か/BMJ

 妊娠中のビタミンD補充の効果について、カナダ・トロント大学のDaniel E Roth氏らは、無作為化試験を対象としたシステマティックレビューのメタ解析を行った結果、「2017年9月までに行われた試験の大半は、小規模で質が低く、現状では臨床的または政策として勧告するに足りる十分なエビデンスはない」ことを報告した。これまでに行われた多くの無作為化試験およびシステマティックレビューでは、相反する結果が発表され、ビタミンDに関する勧告は医療関連の学術団体の間で大きくばらついているが、WHOは現在、ビタミンD補充を推奨している。Roth氏らは11の母体アウトカムと27の新生児/幼児アウトカムに関する妊娠中のビタミンD補充の効果を評価する検討を行った。BMJ誌2017年11月29日号掲載の報告。

コーヒーは有益か?有害か?/BMJ

 コーヒーの飲用は、一般的な量であれば全般に安全で、1日3~4杯の飲用でさまざまな健康転帰のリスクが大幅に低減され、有害性よりも利益が勝る可能性が高いことが、英国・サウサンプトン大学のRobin Poole氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年11月22日号に掲載された。コーヒーは世界的に消費量が多く、とくに慢性肝疾患における利益の可能性が高いとされるが、コーヒー飲用の利益や有害性との関係は多岐にわたる。コーヒーと健康との関連を理解することは、介入研究に先立つ、有害性との関連の探索において重要であるとされている。

昔の日本人は偉かった!(解説:後藤信哉氏)-766

第2次世界大戦後の荒廃の中でも、研究意欲を持ち続けた日本人研究者は多かった。岡本 彰祐・歌子ご夫妻は特筆されるべき存在である。線溶系に着目して彼らが開発した薬剤にトラネキサム酸がある。開発の経緯は『世界を動かす日本の薬』(岡本 彰祐 編著. 築地書館. 2001年)に詳しい。線溶を担うプラスミンの酵素機能を阻害する画期的薬剤である。筆者の世代の臨床医は、止血にアドナ・トランサミンを使うことが多かった。論理的には止血効果を期待できる薬剤であるためだ。日本は巨大企業が利益を独占するEvidence Based Medicineの論理に乗り遅れた。せっかくの薬剤もエビデンスがないとして広く使用されない現状にある。

化学療法制吐薬としてのオランザピンの本邦第II相試験/IJCO

 近年、がん化学療法に対する制吐薬としてのオランザピンの研究結果が報告されている。本邦においても、高度催吐性化学療法に対する、オランザピンの多施設無作為化二重盲検第II相用量設定試験が行われ、国立がん研究センター中央病院の矢内 貴子氏らがInternational Journal of Clinical Oncology誌に結果を報告した。

急性重症出血、トラネキサム酸投与は3時間以内に/Lancet

 外傷性/分娩後出血死の多くは、出血が起きてから短時間で死に至っており、トラネキサム酸による抗線溶療法の開始がわずかでも遅れると、そのベネフィットは減少することを、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngele Gayet-Ageron氏ら研究グループが、被験者4万138例のデータを包含したメタ解析の結果、明らかにした。結果を踏まえて著者は、「重症出血患者は、ただちに治療が開始されなければならない」と提言するとともに、「さらなる研究で、トラネキサム酸の作用機序の理解を深める必要がある」と述べている。抗線溶療法は、外傷性/分娩後出血死を減らすことが知られている。研究グループは、治療の遅れが抗線溶薬の効果に及ぼす影響を調べる検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年11月7日号掲載の報告。

すべての1型糖尿病妊婦にはReal-Time CGMを実施すべきか?(解説:住谷哲氏)-763

妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠では厳格な血糖管理が要求される。とくに1型糖尿病合併妊娠では血糖コントロールに難渋することが多い。現在は各食前、食後、眠前、1日計7回の自己血糖測定(SMBG)と、頻回インスリン投与(Multiple daily injection:MDI)またはインスリンポンプによる強化インスリン療法が主流である。これまで持続血糖モニタリング(CGM)の有用性は示唆されてきたが、糖尿病合併妊婦におけるCGMのSMBGに対する優越性を検討した最新のメタ解析ではCGMの優越性は証明されていない。