内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:78

リポ蛋白(A)濃度の上昇は冠動脈心疾患再発の予測因子

 冠動脈心疾患(CHD)の既往のある高齢者におけるリポ蛋白(a)(Lpa)濃度の上昇は、CHD再発の予測因子であるという研究結果が、「Current Medical Research and Opinion」に6月12日掲載された論文で明らかにされた。  Lpaは、LDLの一部で、線溶因子であるプラスミノーゲンと相同性があるため、プラスミノーゲンと競合してその働きを阻害することによって動脈硬化を促進すると考えられている。LpaはCHDと死亡率の原因因子としてLDLと同等である可能性が示唆されている。Lpa濃度の上昇は、動脈硬化性心血管疾患および大動脈疾患の発症に関与することが明らかにされているが、CHD再発のリスク因子であるかどうかは明らかにされていない。そこで、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のLeon A. Simons氏および St. Vincent’s Hospital(オーストラリア)のJudith Simons氏は、オーストラリアのダボで1930年以前に生まれた高齢者を対象に、Lpa濃度の上昇とCHD再発との関連を調べる縦断的研究を実施した。

起立性低血圧の有無で、積極的な降圧治療における心血管疾患発症や総死亡の抑制効果に違いはあるのか?(解説:石川讓治氏)

積極的な降圧が心血管疾患発症抑制に有用であることが、いくつかの大規模無作為割り付け介入試験で報告されている。しかし、これらの研究では起立性低血圧や起立時血圧が低値である患者が除外されていることが多く、これらを有する患者における心血管疾患発症に対する抑制効果に関しては不明であった。本研究は9つの臨床試験の結果の個別参加者データを統合して、起立性低血圧(座位→起立での血圧低下)と起立時低血圧の有無によって、積極的降圧群における心血管疾患発症または総死亡の抑制効果に違いがあるかどうかを検討したメタ解析である。その結果、起立性低血圧や起立時低血圧の有無では、積極的な降圧治療による心血管疾患の発症または総死亡の抑制効果に統計学的有意差は認められなかった。しかし、起立性低血圧を認める患者における積極的な降圧治療は、有意に心血管疾患発症を抑制していたが、総死亡抑制に関しては統計学的有意差が認められなかった。同様に、起立時低血圧を有する患者における積極的降圧治療においても、心血管疾患発症や総死亡低下効果に統計学的有意差は認められなかった。

過去30年間における世界の頭痛有病率~世界疾病負荷研究

 近年、頭痛は世界的な健康課題として大きく注目されている。この懸念は、とくに低~中所得国で顕著であり、青少年や若年成人における有病率の増加に現れている。このような頭痛の急増により、頭痛患者のQOLは常に低いものとなっている。しかし、世界的な影響にもかかわらず、若年層を対象に頭痛の影響を調査した包括的な研究は、いまだ十分ではない。中国・上海交通大学のXin-Yu Li氏らは1990~2019年の30年間にわたり、15~39歳における頭痛の世界的な有病率を定量化するため、本研究を実施した。結果を踏まえて著者らは、片頭痛と緊張性頭痛(TTH)は世界の健康において大きな課題であるとし、その影響の強さは国によって違いがあり、女性、30~39歳、社会人口統計学的指数(SDI)が高い集団においては、とくに影響が大きいと指摘している。The Journal of Headache and Pain誌2023年9月18日号の報告。

善玉コレステロール値は高くても低くても認知症リスクと関連

 HDLコレステロール(HDL-C)は、心臓や脳の健康に良い「善玉コレステロール」と考えられているが、その値は高過ぎても低過ぎても認知症の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この研究論文の上席著者である米ボストン大学公衆衛生大学院のMaria Glymour氏は、「この研究は、非常に多くの参加者を長期間追跡したものであるため、得られた結果は極めて有益だ。われわれは、コレステロール値の非常に高い場合から非常に低い場合まで、あらゆる値と認知症の発症リスクとの関連を推定することができた」と話している。研究の詳細は、「Neurology」に10月4日掲載された。

食中毒発生率がパンデミック前の水準に増加

 米国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生とともに低下していた食中毒発生率が、パンデミック前の水準に戻ったことが報告された。米疾病対策センター(CDC)のMiranda J. Delahoy氏らの研究によるもので、詳細はCDC発行「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」6月30日号に掲載された。  2020年以降、COVID-19パンデミックに伴う人々の行動変容、公衆衛生対策、患者の受療行動の変化、検査施行件数の変動などの影響によって、さまざまな感染症の罹患率が低下していた。食中毒も同様に、米国ではカンピロバクターやサルモネラ菌による消化器感染症が、2020~2021年にはその前年より減少していた。しかし、感染症減少につながった多くの要因が取り除かれたことによって、再びそのリスクが増大してきている。

血圧が高い十代の男性は高齢になる前に健康危機に直面しやすい

 十代という人生の早い段階で血圧が正常域よりも高い男性は、高齢期に入ってリタイアするより前に、心血管疾患を発症するリスクやそのために亡くなるリスクが高いという実態が報告された。ウメオ大学(スウェーデン)のHelene Rietz氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月26日掲載された。同氏は、十代の若者の血圧高値の潜在的リスクに対する医療従事者の理解が不足していることに懸念を表している。  成人期以降の血圧高値が、心血管イベントリスクと密接に関連していることは、十分明らかになっている。しかし、十代の若者の血圧と将来の心血管イベントとの関連についてのデータは少ない。Rietz氏らはこの点について、スウェーデンの軍人のデータを用いて検討した。

COVID-19の影響で日本人の死亡率が東日本大震災以来の増加

 日本人の年齢調整死亡率は年々低下が続いていたが、2021年には増加に転じたことが明らかになった。主な要因は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、循環器疾患、老衰による死亡の増加だという。国立がん研究センターがん対策研究所データサイエンス研究部の田中宏和氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に8月31日掲載された。  日本人の死亡率(死亡者数が人口に占める割合)は高齢化のために年々上昇している。その一方で、高齢化の影響を統計学的に取り除いた年齢調整死亡率(ASMR)は、社会環境や生活習慣の改善、医療の充実などの影響を受けて、年々低下してきている。ASMRが上昇した近年での数少ない例外は、東日本大震災のあった2011年だった。

インフルワクチン接種、コロナ前後でどう変化した?

 コロナ禍を経て、インフルエンザワクチン接種に対する意識はどう変化しただろうか。米国・ブリガム・ヤング大学のTy J. Skyles氏らによる研究の詳細が、Journal of Community Health誌オンライン版2023年9月11日号に報告された。  本研究では、同大学に通う440人の学生にアンケートを実施し、2007年のデータと比較した。アンケートでは、インフルエンザワクチン接種に対する意識の実態および過去16年間の変化の要因を調査した。また、回答者には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経験やCOVID-19によるワクチン接種への意識の変化についても質問した。

BA.2.86「ピロラ」感染3週間後の抗体応答が大幅に増強/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株であるオミクロン株BA.2.86(通称:ピロラ)は、2023年8月初頭にデンマークで初めて報告され、スウェーデンでは8月7日に初めて検出された。本症例(インデックスケース)は、慢性疾患のない免疫不全の女性であった。本症例の血清および鼻腔粘膜の抗体応答について、2023年2月に得られた検体と、BA.2.86感染から3週間後に得られた検体を用いて比較したところ、BA.2.86感染後ではIgA値およびIgG値の上昇が認められ、感染前より抗体応答が大幅に増強されることが示唆された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOscar Bladh氏らによる、NEJM誌2023年10月26日号CORRESPONDENCEに掲載の報告。

排尿の悩み、恥ずかしがらずに受診できる未来を目指して/ファイザー

 2023年10月19日、ファイザーは、「20年ぶりの疫学調査でわかった、過活動膀胱の最新実態と治療のこれから」と題したメディアセミナーを開催した。  過活動膀胱(OAB)は尿意切迫感を必須の症状とする症状症候群で、現在、1,000万人程度の患者がいると推計されている。その中でも、尿失禁は医師に相談しにくいことから、とくに女性では受診への抵抗感が強いとの報告もあり、症状があっても受診に至らないことや、患者と医師の間で診断や治療への認識に大きな差があることなどがOABの課題とされる。本セミナーでは、約20年ぶりに実施された下部尿路症状の疫学調査の結果について、日本大学医学部 泌尿器科学系 泌尿器科学分野 主任教授の高橋 悟氏が解説した。また、Ubie(ユビー)の代表取締役を務める阿部 吉倫氏が、OABの受診率向上におけるデジタルツールの可能性について語った。