神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:27

動かないと認知症になる?―人類史の視点から(解説:岡村毅氏)

いわゆる「座位行動」の研究である。座位行動とは、座ることに代表されるエネルギー消費量が1.5メッツ以下の行動を指すもので、実際には座っているとは限らない。デスクに座ってコンピュータで作業をする、ソファでだらだらテレビを見る、床に寝転がって本を読む、などはすべて該当する。厚生労働省によると、健康によいとされる3メッツ以上の中高強度身体活動は、1日の起きている時間のうち、わずか3~8%程度だという。一方で座位行動は起きている時間のうちの6割近くを占めるという(引用)。

アルツハイマー病の進行を予測するグリア活性化PETイメージング

 グリア活性化は、アルツハイマー病の病因であるといわれている。しかし、長期的な認知機能低下との関係は明らかになっていない。国立長寿医療研究センターの安野 史彦氏らは、アルツハイマー病患者の経年的な認知機能低下に対するグリア活性化PETイメージングとアミロイド/タウ病理の予後効果を比較するため、本研究を行った。その結果、グリア活性化PETイメージングは、脳脊髄液(CSF)によるアミロイド/タウ測定よりもアルツハイマー病の臨床的な進行の強力な予測因子であることを報告した。

脳出血後のスタチン使用は脳梗塞リスクを低下させる

 脳出血(intracerebral hemorrhage;ICH)後にコレステロール低下薬であるスタチン系薬剤(以下、スタチン)を服用すると、その後の虚血性脳卒中(脳梗塞)リスクが低下する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。南デンマーク大学のDavid Gaist氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に8月30日掲載された。  脳卒中は、脳内の出血により引き起こされるもの(くも膜下出血、ICH)と、脳への血流の遮断により引き起こされる脳梗塞に大別され、発生件数は脳梗塞の方が圧倒的に多い。Gaist氏は、今回の研究背景について、「過去の研究では、ICHの既往歴を有するスタチン使用者での脳卒中発症リスクについて、一致した結論が得られていない」と指摘。「われわれは、ICH後のスタチンの使用が、その後のICHや脳梗塞の発症リスクと関連するのかどうかを検討した」と説明している。

高齢者は1日10時間以上の座位行動で認知症リスク増/JAMA

 60歳以上の高齢者において、加速度計で評価した座位行動時間が長いほど全認知症発症率が有意に高いことが、米国・南カリフォルニア大学のDavid A. Raichlen氏らが実施した大規模コホート研究の後ろ向き解析の結果で示された。座位行動は心代謝性疾患および死亡と関連しているが、認知症との関連は不明であった。著者は、「さらなる研究を行い、座位行動と認知症リスクに因果関係があるのかどうかを調べる必要がある」と述べている。JAMA誌2023年9月12日号掲載の報告。

特定のワクチン接種でアルツハイマー病リスクが低下する可能性

 特定の成人用ワクチンには、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる効果があるようだ。帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、破傷風およびジフテリアの二種混合(Td)ワクチン、またはこれらに百日咳を加えた三種混合(Tdap)ワクチンを接種した人では、これらのワクチンを接種していない人と比べて、アルツハイマー病の発症リスクが25~30%低下していたことが、米テキサス大学健康科学センターのPaul Schulz氏らによる研究で明らかにされた。詳細は、「Journal of Alzheimer's Disease」に8月7日掲載された。  Schulz氏らは2022年に、インフルエンザワクチンを1回以上接種した成人では、同ワクチンを接種したことのない成人と比べてアルツハイマー病を発症するリスクが40%低下していたとする研究結果を報告していた。Schulz氏は、「今回の研究データから、その他にもいくつかの成人用ワクチンがアルツハイマー病発症リスクの低下に関連していることが明らかになった」と説明している。

眼科疾患と認知症リスク~メタ解析

 一般的な眼科疾患と認知症との関係を調査するため、中国・Shenzhen Qianhai Shekou Free Trade Zone HospitalのJiayi Feng氏らは、コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、眼科疾患は、すべての原因による認知症やアルツハイマー病のリスク増加と関連している可能性が示唆された。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2023年7月29日号の報告。  対象は、眼科疾患を有する患者。2022年8月25日までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Web of Scienceなどのオンラインデータベースより、システマティックに検索した。緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、白内障とすべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症との関連を評価したコホート研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いてプールし、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。不均一性の評価には、I2統計を用いた。サブグループ分析および感度分析を実施した。

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛にはパルス高周波とステロイド注射の併用が有効

 腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来した患者の疼痛緩和と障害改善において、パルス高周波(PRF)と経椎間孔ステロイド注射(TFESI)の併用療法は、TFESI単独よりも優れていることが、「Radiology」に3月28日報告された。  ローマ・ラ・サピエンツァ大学付属ポリクリニコ・ウンベルト・プリモ病院(イタリア)のAlessandro Napoli氏らは、12週間以上続く腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来し、保存治療に反応しない患者を、CTガイド下でのPRFとTFESIの併用療法1回を受ける群(174人)と、TFESI単独療法1回を受ける群(177人)にランダムに割り付けた。治療後1週目と52週目に、下肢痛の重症度を数値評価スケール(NRS)で測定した。

食事の質は片頭痛にも影響

 イラン・Isfahan University of Medical SciencesのArghavan Balali氏らは、食事の質と片頭痛との関連性について、評価を行った。その結果、食事の質の改善は、片頭痛の頻度、重症度、関連する問題などの片頭痛アウトカムの改善と関連している可能性が示唆された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2023年8月5日号の報告。  20~50歳の片頭痛患者262例を対象に、横断的研究を実施した。食事の質の評価には、Healthy Eating Index 2015(HEI-2015)およびAlternative Healthy Eating Index 2010(AHEI-2010)を用いた。食事の摂取量の評価には、168項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。

アルツハイマー病患者の大半は新規承認薬の対象外?

 米国では最近、早期段階のアルツハイマー病の患者にとって新たな希望となりそうな2種類の治療薬が承認された。しかし、これらの新規承認薬の恩恵を受けられる可能性のある人の多くは治療の対象外とみなされる可能性の高いことが、米メイヨー・クリニックのグループによる新たな研究で示された。この研究結果は、「Neurology」に8月16日掲載された。  米食品医薬品局(FDA)に7月に承認されたばかりのアルツハイマー病治療薬のレカネマブ(商品名レケンビ)と、2021年に承認されたアデュカヌマブ(商品名アデュヘルム)はいずれもモノクローナル抗体薬だ。論文の共著者の1人で米メイヨー・クリニック神経学分野のVijay Ramanan氏は、「新たに開発されたアルツハイマー病の治療選択肢に対して広く関心が持たれているのは当然のことだ。アルツハイマー病は深刻な疾患であるが、これまで20年以上にわたって新規に承認されたアルツハイマー病治療薬はなかったからだ」と話す。同氏は、「新しい治療薬が登場したことで、この状況から一歩前進した」とする一方で、「これらの治療薬が直面している大きな課題の一つは、臨床試験によって得られた知見を実臨床にどのように取り入れるかという点だ」と指摘する。

猛暑は一部の高齢者の認知機能を低下させ得る

 2023年は観測史上最も暑い年となることが予測されているが、熱波の影響で高齢者の記憶力や思考力の低下が速まる可能性のあることが、米ニューヨーク大学(NYU)国際公衆衛生学部のEun Young Choi氏らの研究で示唆された。米国の高齢者を対象としたこの研究では、極端な暑さ(以下、猛暑)に長時間さらされた日数が多い人では認知機能の低下速度がより速くなることが示された。ただし、この関連は、黒人や貧困地域の住民などの特定の集団でのみ認められた。この研究結果は、「Journal of Epidemiology and Community Health」に8月4日発表された。