神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:27

solanezumab、前臨床期アルツハイマー病の進行を遅延せず/NEJM

 前臨床期のアルツハイマー病患者において、solanezumabはプラセボと比較し、約4.5年間で認知機能低下を遅延しなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のReisa A. Sperling氏らが、米国、日本、カナダおよびオーストラリアの67施設で実施した無作為化比較試験「Anti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer's Disease:A4試験」の結果を報告した。アルツハイマー病の異なる病期において、さまざまな形態のアミロイドを標的とするモノクローナル抗体の臨床試験が行われているが、結果はまちまちである。solanezumabは、可溶性のアミロイドβ単量体を標的としていた。NEJM誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。

MIND食は認知症を予防せず/NEJM

 認知症の家族歴のある認知機能障害のない高齢者において、ベースラインから3年までの認知機能および脳MRIの変化は、MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)摂取群と軽度カロリー制限を伴う対照食摂取群で有意な差はなかった。米国・ラッシュ大学医療センターのLisa L. Barnes氏らが、米国国立老化研究所の助成を受けて実施した無作為化比較試験の結果を報告した。MIND食は、地中海食とDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧を防ぐ食事法)を混成(hybrid)させたもので、認知症リスク低下との関連が推定される食品を含むよう修正されている。観察研究から得られた知見では、食事パターンが認知機能低下の予防に効果がある可能性が示唆されているが、臨床試験のデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2023年7月18日号掲載の報告。

donanemab、早期アルツハイマー病の進行を抑制/JAMA

 早期症候性アルツハイマー病でアミロイドおよびタウ沈着の病理学的所見が認められる患者に対し、donanemabはプラセボと比較して、76週時点で評価した臨床的進行を有意に遅延させたことが示された。所見は、低・中タウ病理集団と低・中+高タウ病理集団で認められたという。米国・Eli Lilly and CompanyのJohn R. Sims氏らが、1,736例を対象に行われた国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「TRAILBLAZER-ALZ 2試験」の結果を報告した。donanemabは、脳アミロイド斑を除去するよう設計された抗体医薬。JAMA誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。

脳出血患者の収縮期血圧を1時間以内に130~140mmHgにコントロールすると通常治療と比較して6ヵ月後の神経学的予後(modified Rankin Scale)が良い(解説:石川讓治氏)

脳出血患者の急性期の血圧をどのようにコントロールすればよいのかという問題は、徐々に変化してきた。『脳卒中治療ガイドライン』の2009年版においては、「脳出血急性期の血圧は、収縮期血圧が180mmHg未満または平均血圧が130mmHg未満を維持することを目標に管理する」ことが推奨されていたが、2015年版では、「できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持することを考慮しても良い」となり、2021年版では、「脳出血急性期における血圧高値をできるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満へ降圧し、7日間維持することは妥当であり、その下限を110mmHg超に維持することを考慮しても良い」となった。本研究において、低および中所得国(9ヵ国)で行われた多施設共同研究で、発症6時間以内の脳出血患者を対象に、(1)1時間以内の収縮期血圧(140mmHg未満を目標、130mmHgを下限)、(2)できるだけ早期の血糖(非糖尿病患者では6.1~7.8mmol/L、糖尿病患者では7.8~10.0mmol/L)、(3)1時間以内の体温(37.5度未満)、(4)ワルファリン内服患者においては1時間以内にINR1.5未満を目標に速やかにコントロールを行うことで、6ヵ月後に評価したmodified Rankin Scaleにおける神経学的予後が、通常治療よりも良好であったことが報告された。

食習慣と片頭痛リスクとの関係

 片頭痛発症に対する食事の影響は知られているものの、大規模サンプルにおける片頭痛リスクと食習慣との潜在的な因果関係については、よくわかっていない。中国・山東大学のXinhui Liu氏らは、食習慣と片頭痛発症リスクとの潜在的な因果関係および片頭痛リスク因子のメディエーターの役割を明らかにするため、本研究を行った。その結果、食習慣と片頭痛リスクとの関連が認められ、一部の食物は不眠症やうつ病にも影響している可能性が示唆された。Frontiers in Nutrition誌2023年6月7日号の報告。

認知症に対するゲーム療法の有効性~メタ解析

 アルツハイマー病は、重度の神経変性疾患であり、直接的および間接的に大きな経済的負担をもたらす。しかし、効果的な薬物療法の選択肢はいまだ限られている。近年、認知症患者に対するゲーム療法が注目を集め、さまざまな研究が行われている。中国・北京大学のJiashuai Li氏らは、既存の研究データを統合し、認知症患者に対するゲーム療法の効果を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、ゲーム療法は、認知症患者の認知機能および抑うつ症状の改善が期待できる介入であることが示唆された。Worldviews on Evidence-Based Nursing誌オンライン版2023年6月12日号の報告。  認知機能、QOL、抑うつ症状をアウトカム指標とし、認知症患者に対するゲーム療法の影響を評価したランダム化臨床試験および準実験的研究を分析対象に含めた。トレーニングを受けた2人の独立した研究者により、研究のスクリーニング、品質評価、データ抽出を実施した。統計分析には、Review Manager(Revman)5.3およびSTATA16.0ソフトウエアを用いた。

腸内細菌叢の変化は前臨床期アルツハイマー病のサイン?

 脳内にアミロイドβ(Aβ)とタウの2種類のタンパク質が異常に蓄積しているが、認知症の症状はない前臨床期アルツハイマー病の状態にある人では、そのような状態にはない人と比べて腸内細菌叢に違いのあることが、米セントルイス・ワシントン大学神経学教授のBeau Ances氏らの研究で示された。認知症のリスクが高い人を見つけ出す方法や、認知症高リスク者に対する治療法の開発につながる可能性がある研究結果として期待が寄せられている。研究の詳細は、「Science Translational Medicine」6月14日号に掲載された。

コロナ罹患後症状における精神症状の国内レジストリ構築、主なリスク因子は?/日本精神神経学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はすでに3年以上経過しているが、流行が長期化するほど既感染者が増加し、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、Long COVID)のリスクも上がる。コロナ後遺症は、倦怠感や認知機能障害といった精神神経障害が年単位で持続する場合もある。  国立精神・神経医療研究センターの高松 直岐氏らの研究チームは、こうしたコロナ後遺症の病態解明と新規治療法開発につなげるため、COVID-19感染後の精神症状を有する患者レジストリの構築を実施している。中間解析の結果、コロナ後遺症による有意な心理社会的機能障害の予測因子は、退職経験、主婦層、COVID-19罹患への心配や抑うつが中等度以上、ワクチン接種2回以下であることが示された。6月22~24日に横浜にて開催された第119回日本精神神経学会学術総会にて、高松氏が発表した。

ドラム演奏で認知症の重症度が分かる―東京大学先端科学技術研究センター

 ドラムをたたく時の腕の上げ具合で、認知症の重症度を判定できる可能性が報告された。東京大学先端科学技術研究センターの宮崎 敦子氏らによるパイロット研究の結果であり、詳細は「Frontiers in Rehabilitation Sciences」に5月25日掲載された。著者らは、「この方法は簡便なだけでなく、既存の重症度評価ツールへの回答を拒否されるケースでも、ドラムたたきなら協力してもらえるのでないか」と述べている。  現在、認知症の重症度は、ミニメンタルステート検査(MMSE)といった評価指標を用いて判定することが多い。ただし、認知症が重度になるほど、そのような検査の必要性を理解しにくくなり、検査への協力を得られなくなることが増える。また視覚や聴覚に障害のある場合も、その施行が難しくなったり、判定結果が不確かになりやすい。

糖尿病発症年齢が若いほど認知症リスクが高い

 前糖尿病は認知症リスクが高いものの、糖尿病への移行を防ぐことができれば、認知症リスクの上昇を抑えることができる可能性を示すデータが報告された。また、より若い年齢で糖尿病に移行した場合は、認知症リスクがより高くなることも示された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に5月24日掲載された。  前糖尿病は、血糖値が基準値よりは高いものの、糖尿病の診断基準は満たしていない状態のことで、月日の経過とともに糖尿病に移行しやすい。前糖尿病では肥満などの影響のために、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する感受性が低下する「インスリン抵抗性」を生じていることが多い。