神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:29

脳卒中既往のある心不全患者の心血管リスク、HFrEFとHFpEFで検討

 左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)と左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)の患者における脳卒中既往と心血管イベント(心血管死/心不全入院/脳卒中/心筋梗塞)発生率を調べたところ、左室駆出率にかかわらず、脳卒中既往のある患者はない患者に比べて心血管イベントリスクが高いことが示された。英国・グラスゴー大学のMingming Yang氏らが、European Heart Journal誌オンライン版2023年6月26日号で報告。  本研究は、HFrEFとHFpEFの患者が登録されていた7つの臨床試験のメタ解析である。

認知症患者に処方される抗精神病薬と併用薬の分析

 さまざまな問題が指摘されているにもかかわらず、抗精神病薬が認知症患者に対し、依然として一般的に処方されている。北里大学の斉藤 善貴氏らは、認知症患者に対する抗精神病薬の処方状況および併用薬の種類を明らかにするため、本検討を行った。その結果、認知症患者への抗精神病薬の処方と関連していた因子は、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用であった。著者らは、抗精神病薬の処方の最適化には、正確な診断のための地域の医療機関と専門医療機関の連携強化、併用薬の効果の評価、処方カスケードの解決が必要であるとしている。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2023年5月26日号の報告。

乳製品と認知症リスク、チーズとヨーグルトで関連が逆の可能性~大崎コホート

 日本人高齢者における乳製品摂取と認知症発症リスクとの関連について東北大学のYukai Lu氏らが調査したところ、総乳製品摂取量が多いほど認知症発症リスクが低いという用量反応関係は確認できなかったが、相対的に少ない摂取量(第2五分位)で認知症発症リスクが低い可能性が示された。また、乳製品別の摂取頻度と認知症発症リスクの関連については、牛乳では低い摂取頻度(月1~2回)で認知症発症リスクが低い可能性が示された。さらに、ヨーグルトでは毎日摂取すると認知症発症リスクが低い一方、チーズでは毎日摂取するとリスクが高い可能性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月19日号に掲載。

日本における抗認知症薬に関連する有害事象プロファイル

 抗認知症薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に関連する有害事象(ADE)の発生率は、5~20%と推定されており、さまざまな症状が認められる。しかし、各抗認知症薬のADEプロファイルの違いを検討した報告は、これまでなかった。帝京大学の小瀬 英司氏らは、抗認知症薬とADEプロファイルに違いがあるかを検討した。Die Pharmazie誌2023年5月1日号の報告。  医薬品副作用データベース(JADER)に基づき、データを収集した。2004年4月~2021年10月のADEデータを分析するため、レポートオッズ比(ROR)を用いた。対象薬剤は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンとした。最も発生頻度の高い有害事象の上位10件(徐脈、食欲不振、意識喪失、発作、変性意識状態、転倒、せん妄、嘔吐、失神、横紋筋融解症)を選択した。主要アウトカムはRORとし、副次的アウトカムは抗認知症薬に関連するADEの発現年齢および発生までの期間とした。

補聴器の使用が認知機能低下リスクの低減に関連

 難聴患者では、補聴器の使用が長期的な認知機能低下のリスク低減に関連することが、「JAMA Neurology」に12月5日報告された。  シンガポール国立大学(シンガポール)のBrian Sheng Yep Yeo氏らは、補聴器・人工内耳と認知機能低下や認知症との関連について、システマティックレビューとメタアナリシスを実施。対象は31件の研究(13万7,484人)で、このうち19件を定量分析の対象とした。  難聴と認知機能低下との長期的な関連を調べた8件の研究(対象者12万6,903人、追跡期間2~25年)のメタアナリシスにおいて、補聴器を使用している患者では未矯正の患者に比べて、認知機能低下のリスクが有意に低いことが判明(ハザード比0.81)。聴力回復と短期的な認知テストスコアの変化を調べた11件の研究(対象者568人)のメタアナリシスでは、補聴器使用後にスコアの改善が見られた(平均値比1.03)。

円形脱毛症の母親の出生児が抱えるリスクとは?

 韓国・延世大学校のJu Yeong Lee氏らが実施した後ろ向き出生コホート研究において、円形脱毛症(AA)を有する母親から出生した児は、AAに関連する併存疾患リスクが高いことが示された。母親のAAと児の自己免疫疾患や炎症性疾患、アトピー性疾患、甲状腺機能低下症、精神疾患の発症に関連がみられ、著者は「臨床医や保護者は、これらの疾患が発生する可能性を認識しておく必要がある」と述べている。AAは自己免疫疾患や精神疾患と関連することが知られているが、AAを有する母親の児に関する長期アウトカムの調査は不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。

辛い食物とアルツハイマー病関連の認知機能低下との関係

 アルツハイマー病または認知機能低下と辛い食物摂取や身体活動とは、関連があるといわれているが、その調査は十分に行われていない。韓国・順天郷大学校のJaeuk Hwang氏らは、身体活動の緩和効果の条件下における辛い食物とアルツハイマー病関連の記憶力低下または全体的な認知機能低下との関連を調査した。その結果、辛い食物摂取は、アルツハイマー病関連の認知機能低下(エピソード記憶)の予測因子であり、とくに身体活動量の低い高齢者では悪化する可能性があることを報告した。Scientific Reports誌2023年5月16日号の報告。

閉塞性睡眠時無呼吸は脳の状態を悪化させる可能性

 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)による睡眠の質の低下は、高齢者の脳の状態を悪化させる可能性のあることが、OSA患者を対象に脳の画像検査を実施した研究で示唆された。米メイヨー・クリニック睡眠医学センターのDiego Carvalho氏らが実施したこの研究の詳細は、「Neurology」に5月10日掲載された。  睡眠時無呼吸は、空気の通り道である上気道が狭くなって生じるOSAと、呼吸中枢の異常により生じる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)に大別される。Carvalho氏によると、睡眠時無呼吸は、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、認知障害、認知症のリスク上昇に関連していることが指摘されている。また、血圧や心拍数の上昇、酸素レベルの低下、中途覚醒などをもたらし、さまざまな面で脳に有害な影響が及ぶことも分かっているという。

気が散りやすいのは若年者と高齢者のどちら?

 買い物袋の持ち運びや車の運転のような努力を要する身体動作を行う際に、高齢者は若年者よりも、その動作とは関係のない物事に気を取られやすいことが、米カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)のLilian Azer氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Psychology and Aging」に4月27日掲載された。  この研究には65~86歳の高齢者19人と18~28歳の若年成人31人が参加した。全ての参加者に、短期記憶の課題に取り組みながら、同時に握力計を最大努力時の5%または30%の力で握ってもらった。握力の強さは、階段を上るときや車の運転時、食料品の入った袋の運搬時に発揮する力を想定したもので、視覚的尺度により参加者にリアルタイムで発揮している力の強さをフィードバックした。なお、車の運転では最大努力時の約30%、買い物袋を持ち運ぶ際には最大努力時の約20%の握力が使われることが多いという。

アルツハイマー病治療薬lecanemabの安全性・有効性~メタ解析

 アルツハイマー病に対するlecanemabの有効性および安全性を評価するため、中国・Shengjing Hospital of China Medical UniversityのYue Qiao氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、実臨床における意義は確立していないものの、lecanemabは、早期アルツハイマー病患者の認知機能、行動に対し有効性を示すことが報告された。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年5月5日号の報告。  2023年2月までに公表された軽度認知障害またはアルツハイマー病患者における認知機能低下に対するlecanemab治療を評価したランダム化対照比較試験を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochraneより検索した。臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)、Alzheimer's Disease Composite Score(ADCOMS)、AD Assessment Scale-Cognitive Subscale(ADAS-Cog)、臨床的認知症尺度(CDR)、アミロイドPET SUVr、PETにおけるアミロイド負荷、有害事象リスクに関するアウトカムを収集した。