神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:25

認知症は現代病? 古代での症例はまれ

 認知症は時代を問わず人類を悩ませてきた病気だと思われがちだが、実際には現代に登場した病気であるようだ。米南カリフォルニア大学レオナード・デイビス校(老年学)のCaleb Finch氏と米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校歴史学分野のBurstein Stanley氏らが古代ギリシャとローマの医学書を分析した結果、アリストテレスや大プリニウスなどが活躍した今から2000〜2500年前には、認知症に罹患する人は極めてまれだったことが示唆されたのだ。研究グループは、「現代の環境やライフスタイルがアルツハイマー病などの認知症の発症を促しているとする考え方を補強する結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of Alzheimer’s Disease」に1月25日掲載された。

抗精神病薬使用と認知症リスク~40万人超のプロスペクティブコホート研究

 抗精神病薬は、最も汎用されている薬剤の1つであり、認知機能低下を引き起こす可能性が示唆されている。しかし、認知症リスクに対する抗精神病薬の影響に関する研究は、一貫性がなく、十分とは言えない。中国・青島大学のLi-Yun Ma氏らは、抗精神病薬使用と認知症リスクとの関係を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年3月15日号の報告。  英国バイオバンク参加者41万5,100例のプロスペクティブコホート研究のデータを用いて、分析を行った。抗精神病薬およびさまざまなクラスの使用が認知症リスクに及ぼす影響を評価するため、多変量Cox比例ハザードモデルおよび経口抗精神病薬用量反応効果分析を用いた。

コロナによる認知障害、症状持続期間による違いは?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へ感染し、症状が消失・回復しても、症状の持続期間にかかわらず軽度の認知機能障害が認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAdam Hampshire氏らが、オンライン評価による大規模コミュニティのサンプル調査(14万例超)の結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の認知機能障害はよく知られているが、客観的に測定可能な認知機能障害が存在するか、またどのくらいの期間持続するかは不明だった。NEJM誌2024年2月29日号掲載の報告。   研究グループは、イングランドの試験に参加した成人80万例に対し、認知機能のオンライン評価の実施を依頼し、8タスクの全般的認知機能スコアを推定した。  感染発症後に12週間以上持続する症状を有した患者は、客観的に測定可能な全般的認知機能障害があり、とくに直近の記憶力低下または思考や集中困難(ブレインフォグ)を報告した患者では、実行機能と記憶の障害が観察されるだろうと仮説を立て、検証した。

カフェインは片頭痛を引き起こすのか

 カフェイン摂取は、片頭痛の要因であると考えられており、臨床医は、片頭痛患者に対しカフェイン摂取を避けるよう指導することがある。しかし、この関連性を評価した研究は、これまでほとんどなかった。習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、強さとの関係を調査するため、米国・Albany Medical CollegeのMaggie R. Mittleman氏らは、発作性片頭痛成人患者を対象としたプロスペクティブコホート研究を実施した。Headache誌オンライン版2024年2月6日号の報告。  2016年3月~2017年8月に発作性片頭痛と診断された成人患者101例を対象に、カフェイン入り飲料の摂取に関する情報を含むベースラインアンケートを実施した。対象患者は、頭痛の発症、持続時間、痛みの強さ(スケール:0~100)に関する情報を1日2回、6週間、電子的日誌で報告した。年齢、性別、経口避妊薬の使用で調整した後、ベースライン時の習慣的なカフェイン摂取と6週間の頭痛との関連を評価した。

3Dプリントで「会話」する脳組織の作成に成功

 ニューロン(神経細胞)が互いにネットワークを形成して「会話」する脳組織を3Dプリンティング技術で作成することに成功したという研究結果を、米ウィスコンシン大学マディソン校の研究グループが発表した。研究グループは、「研究室における神経学的プロセスの研究を進歩させる画期的な成果だ」と述べている。同大学マディソン校ワイズマンセンターのSu-Chun Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「Cell Stem Cell」2月号に掲載された。  Zhang氏は、「これは、ヒトの脳細胞や脳の部位がどのようにコミュニケーションを取っているのかを理解する上で、非常に強力なモデルになる可能性がある」と述べ、「この3Dプリントの脳組織は、幹細胞生物学、神経科学、そして多くの神経疾患や精神疾患の発症機序に対する見方を変える可能性がある」と付け加えている。

認知症になる前に頭の中で何が起きているのか(解説:岡村毅氏)

アルツハイマー型認知症になる前に頭の中で何が起きているのだろうか? もうすぐ新学期だから、医学生・看護学生に話すつもりでわかりやすく説明しよう。かつてはアルツハイマー型認知症のことは何もわかっていなかったが、亡くなった人の脳を調べることで、重症になればなるほどアミロイドが溜まり、タウが溜まり、脳が小さくなっている(萎縮という)ということがわかっていた。しかし脳は、たとえば肝臓のように、バイオプシーができないため、実際に生きている人の脳の中で何が起きているのかはわからないという大問題があった。診断に関しても、血液検査や画像検査(こういうのをバイオマーカーという)ではわからないので、臨床診断しかなかったのだ。われわれがいつも使ってきたDSM4やICD10はバイオマーカーを用いない臨床診断である。

認知症の診断、実は肝硬変の可能性も?

 高齢化した米国の退役軍人を対象とした新たな研究で、認知症と診断された人の10人に1人は、実際には肝硬変により脳に障害が生じている可能性のあることが示された。米リッチモンドVA医療センターのJasmohan Bajaj氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に1月31日掲載された。  肝硬変は、肝臓の肝組織が徐々に瘢痕化して機能障害を起こすもので、その発症要因には、年齢、男性の性別、アルコール性肝障害、肝炎ウイルス、うっ血性心不全など多数ある。肝硬変の症状の一つである肝性脳症は、本来、肝臓で分解されるはずのアンモニアが、肝硬変や肝臓がんなどによる肝機能の低下が原因で十分に分解されず、血液に蓄積して脳に達し、脳の機能が低下する病態を指す。

漢方薬による偽アルドステロン症、高血圧や認知症と関連

 漢方薬は日本で1500年以上にわたり伝統的に用いられているが、使用することにより「偽アルドステロン症」などの副作用が生じることがある。今回、日本のデータベースを用いて漢方薬の使用と副作用報告に関する調査が行われ、偽アルドステロン症と高血圧や認知症との関連が明らかとなった。また、女性、70歳以上などとの関連も見られたという。福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座の畝田一司氏らによる研究であり、詳細は「PLOS ONE」に1月2日掲載された。  偽アルドステロン症は、血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにもかかわらず、高血圧、むくみ、低カリウムなどの症状が現れる状態。「甘草(カンゾウ)」という生薬には抗炎症作用や肝機能に対する有益な作用があるが、その主成分であるグリチルリチンが、偽アルドステロン症の原因と考えられている。現在、保険が適用される漢方薬は148種類あり、そのうちの70%以上に甘草が含まれている。

日本人片頭痛患者における日常生活への影響~OVERCOME研究

 日本人の片頭痛患者を対象に、日常生活活動や基本的な健康指標(睡眠、メンタルヘルス)など、日常生活に及ぼす影響を詳細に調査した研究は、これまであまりなかった。鳥取県済生会境港総合病院の粟木 悦子氏らは、日本人片頭痛患者における日常生活への影響を明らかにするため、横断的観察研調査を実施した。Neurology and Therapy誌2024年2月号の報告。  日本における片頭痛に関する横断的疫学調査(OVERCOME研究)は、2020年7~9月に実施した。片頭痛による家事、家族/社交/レジャー活動、運転、睡眠への影響は、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life(MSQ)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children(IMPAC)scales、OVERCOME研究のために作成したアンケートを用いて評価を行った。片頭痛のない日の負担を評価するため、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)を用いた。抑うつ症状および不安症状の評価には、8項目の患者健康質問票うつ病尺度(PHQ-8)、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)をそれぞれ用いた。日常生活への影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリで評価した。

日本人の睡眠時間やその変化が認知症リスクに及ぼす影響

 睡眠時間およびその変化が長期的な認知症リスクに及ぼす影響について、これまでの研究結果は一貫していない。長崎大学の宮田 潤氏らは、日本人の中年期における睡眠時間およびその変化と認知症リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、長時間睡眠および睡眠時間の増加が認知症リスクと関連することが示唆された。Preventive Medicine誌オンライン版2024年2月2日号の報告。  研究チームは、40~71歳の日本人4万1,731人を募集し、ベースライン時(1990~94年)の習慣的な睡眠時間および5年間のフォローアップ調査について記録した。睡眠時間の変化はベースライン時と5年間の測定結果の差として算出し、認知症の発症は介護保険制度の利用(2007~16年)で特定した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、エリア層別Coxモデルを用いた。