脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:69

急性期脳梗塞の欧州人患者、血管内治療前のアルテプラーゼは不要か/NEJM

欧州人の急性期脳梗塞患者の治療において、血管内治療(EVT)単独はアルテプラーゼ静注後にEVTを行う通常治療と比較して、90日後の修正Rankin尺度で評価した機能障害に関して優越性も非劣性もみられず、死亡や症候性脳出血の発生にも両群間に差はないことが、オランダ・アムステルダム大学のNatalie E. LeCouffe氏らが実施した「MR CLEAN-NO IV試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年11月11日号に掲載された。  本研究は、急性期脳梗塞の欧州人の患者の治療におけるEVT単独の有効性と非劣性をアルテプラーゼ静注後のEVTと比較する医師主導の非盲検(エンドポイント評価者盲検)無作為化試験であり、2018年1月~2020年10月の期間に、オランダ、ベルギー、フランスの20の病院で参加者の登録が行われた(オランダCollaboration for New Treatments of Acute Stroke consortiumなどの助成を受けた)。

欧州人では血管内治療前の血栓溶解療法は必要か?(解説:内山真一郎氏)

前方循環系の脳内主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中において血管内治療(EVT)前のアルテプラーゼ静注療法の有無を比較した無作為化比較試験はいずれもアジア(中国と日本)で行われており、欧州で行われた本試験(MR CLEAN-NO IV)はアジア以外では初めての試験であった。EVTが可能で、かつアルテプラーゼ静注療法の適応がある539例を対象に行われた本試験では、主要評価項目であった90日後の転帰に両群間で有意差はなく、EVT単独療法の非劣性は証明されず、安全性の評価項目であった症候性頭蓋内出血もEVT単独群とアルテプラーゼ併用群の間に有意差がなかった。これまでに行われた同様の試験としては、中国で行われたDIRECT-MT試験とDEPT試験、および日本で行われたSKIP試験の3試験があり、それらのメタ解析によれば、血管内治療単独群と血栓溶解橋渡し療法群の間に3ヵ月後の転帰は有意差がなく、症候性頭蓋内出血も有意差がないという結果が示されている。本試験の結果もこのメタ解析と同様であり、この論争に決着をつけるには、さらなるエビデンスの集積が必要になる。

併用療法の有効性が示唆される結果となった(解説:高梨成彦氏)

 経皮的脳血栓回収術では、血栓吸引カテーテルとステントリトリーバーの2種類のデバイスが使用される。基本的にはそれぞれ単独で使用するが、効率的な回収を期待して両者を組み合わせた併用療法も行われている。  本研究は併用療法がステントリトリーバー単独療法よりも有効性が高いという作業仮説を証明するために組まれた、オープンラベルのランダム化比較試験である。  主要評価項目は手術終了時のTICI 2c/3の有効再開通率と設定され、最終的に408例の患者が参加した。年間100例以上の脳血栓回収術を行っている施設のみが参加しており、術者は血栓吸引法とステントリトリーバー法をそれぞれ10例以上経験していることが条件である。

降圧薬の心血管イベント抑制効果 年齢やベースラインの血圧で異なるか (解説:江口和男氏)

わが国の高血圧ガイドラインでは、高齢者における降圧目標を65~74歳については非高齢者と同様の130/80mmHg未満、75歳以上では原則として140/90mmHg未満としている(JSH2019ガイドライン)。同様に、ESHガイドラインでは60~79歳では140/90mmHg以上、80歳以上では160/90mmHg以上と年齢により降圧薬開始の基準を分けている。英国のNICEガイドラインでは80歳以上の高齢者で血圧が150/90mmHg以下であれば降圧治療を推奨しないとし、ISH2020ガイドラインでは冠動脈疾患、脳卒中などの併存疾患がある際の各降圧目標について、通常の130/80mmHgでなく高齢者は140/80mmHg未満と記載している。一方、米国ACC/AHA2017ガイドラインでは65歳以上のすべての外来通院可能な高齢者かつ収縮期血圧(SBP)≧130mmHgではSBPゴール130mmHg未満を目標とした降圧治療を推奨している。このようにわが国および国際的高血圧ガイドラインにおいて高齢者高血圧に対する降圧治療の考え方が異なっている。では、高齢者において積極的降圧療法を行う場合、降圧療法の開始基準や降圧目標を年齢で分けなければならないのだろうか? 高齢者における降圧療法では過降圧が危惧されるが、血圧レベルがさほど高くない場合(たとえば130/80mmHg)では、低血圧などの有害事象が出るだけでイベント抑制効果はないのであろうか?

日本人と米国人の認知症リスクを比較

 アルツハイマー病ニューロイメージングイニシアチブでは、一般集団において日本人は米国人よりも脳のAβ負荷が有意に低いことが示唆されている。米国・ピッツバーグ大学のChendi Cui氏らは、認知機能が正常な高齢の日本人と米国人の血管疾患負荷、Aβ負荷、神経変性について比較を行うため、横断的研究を実施した。Brain Sciences誌2021年9月8日号の報告。  日本人と米国人の対象者は、年齢、性別、アポリポ蛋白E(APOE)遺伝子型でマッチさせた。脳血管疾患負荷は白質病変(WML)、脳Aβ負荷は11C-labeled Pittsburgh Compound B(PiB)を用いて評価した。神経変性は、海馬体積と皮質厚で評価した。  主な結果は以下のとおり。 ・調査対象は、日本人95人と米国人95人(男性の割合:50.5%、平均年齢:82歳)。 ・日本人は、米国人と比較し、WMLが大きかったが、全体的なAβ standardized uptake value ratio(SUVR)、皮質厚、海馬体積に有意な違いは認められなかった。 ・日本人は、腹側線条体、後帯状皮質、楔前部における局所のAβ SUVRが有意に低かった。

脳卒中再発予防、チカグレロルvs.クロピドグレル/NEJM

 中国人のCYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する軽度虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)患者において、90日時点の脳卒中再発リスクは、クロピドグレルと比較しチカグレロルがわずかに低かった。また、中等度~重度出血リスクは両群間に差はなかったものの、すべての出血イベントはクロピドグレルと比較してチカグレロルで増加した。中国・首都医科大学のYongjun Wang氏らが、中国の202施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CHANCE-2試験」の結果を報告した。これまで、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子保有者の脳卒中再発予防に関して、チカグレロルとクロピドグレルを比較した研究はほとんど実施されていなかった。NEJM誌オンライン版2021年10月28日号掲載の報告。  研究グループは、CYP2C19機能喪失型対立遺伝子を有する40歳以上の軽度虚血性脳卒中/TIA患者(NIHSS≦3、ABCD2スコア≧4)を、発症後24時間以内にチカグレロル群(チカグレロルを1日目に180mg、2~90日目に90mg 1日2回、およびクロピドグレルのプラセボ)、またはクロピドグレル群(クロピドグレルを1日目に300mg、2~90日目に75mg 1日1回、およびチカグレロルのプラセボ)に、1対1の割合で無作為に割り付け、両群ともアスピリンを21日間併用投与した。

Webベースの認知症BPSDケアプログラムの普及促進のために

 COVID-19パンデミックとその結果引き起こされたソーシャルディスタンスの順守は、認知症患者の精神神経症状を誘発する可能性があるといわれている。東北大学の中西 三春氏らは、認知症の精神神経症状に対応するためのWebベースの心理社会的介入プログラムの有効性およびWebベースツールを利用する認知症介護者に対するeラーニングトレーニングコースの有用性を評価した。JMIR Medical Education誌2021年10月12日号の報告。  本研究は、東京において準実験的研究として実施された。eラーニングコースは、2020年7月~12月に専門の介護者に対し3回実施した。コースを修了した介護者は、認知症患者の精神神経症状レベルを評価するため、Webベースツールを介したNeuropsychiatric Inventory(NPI)合計スコアを用いた。主要アウトカムは、2021年3月までNPI評価のフォローアップを実施した介護者数およびベースラインから最新の評価までのNPIスコアの変化とした。2019年7月~2020年3月に対面によるトレーニングコースを完了した専門の介護者を対照群とし、情報を入手した。

慢性片頭痛予防に対する抗CGRP抗体の有効性と忍容性~ネットワークメタ解析

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体に作用する4つのモノクローナル抗体は、慢性片頭痛を予防する新たな生物学的製剤として注目されている。台湾・弘光科技大学のChun-Pai Yang氏らは、慢性片頭痛に対する抗CGRP抗体の有効性および安全性について、従来治療薬との比較を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Neurotherapeutics誌オンライン版2021年9月27日号の報告。  慢性片頭痛患者を対象に抗CGRP抗体とA型ボツリヌス毒素製剤、トピラマート(従来治療薬)との比較を行ったランダム化比較試験(RCT)を検索した。すべてのネットワークメタ解析の手順は、frequentist modelを用いて行った。主要アウトカムは、1ヵ月当たりの片頭痛日数の変化および50%治療反応率とした。安全性は、受容性(脱落率)および有害事象の割合で評価した。

がん治療用ウイルスG47Δテセルパツレブ発売/第一三共

 第一三共は、2021年11月1日、同社が東京大学医科学研究所の藤堂具紀氏と共同で開発したがん治療用ウイルス G47Δテセルパツレブ(製品名:デリタクト)を国内で発売した。  G47Δは、がん細胞でのみ増殖可能となるよう設計された人為的三重変異を有する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型で、藤堂氏らにより創製された。  同剤は、膠芽腫患者を対象とした国内第II相臨床試験(医師主導治験)の結果に基づき、2021年6月に悪性神経膠腫の治療を目的とした再生医療等製品として、国内で条件及び期限付承認に該当する製造販売承認を取得した。同剤は当面の間、治験実施施設のみへの供給となる。

日本人アルツハイマー病患者の経済状況と死亡率との関係

 さまざまな国においてアルツハイマー病(AD)への対策が実施されており、アルツハイマー病患者における経済状況と死亡率との関係についての知見もアップデートすることが望まれている。神戸大学の小野 玲氏らは、レセプトデータを用いて日本人アルツハイマー病患者の死亡率に対する経済状況の影響を調査するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2021年9月15日号の報告。  LIFE研究(Longevity Improvement and Fair Evidence study)に参加した13の地方都市より収集した2014年4月~2019年3月のレセプトデータを分析した。対象は、研究期間中に新たにアルツハイマー病と診断された65歳以上の患者とした。アウトカムは、フォローアップ期間中の死亡とした。経済状況は、家計収入により中高所得と低所得で評価した。低所得状況の指標となるデータは、アルツハイマー病診断時における限度額適用認定および標準負担額減額認定(医療費軽減カード)の利用より収集した。経済状況と死亡率との関連を調査するため、年齢、性別、チャールソン併存疾患指数、抗認知症薬の使用で調整し、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。