壮年性脱毛症の治療薬に含まれる抗男性ホルモン物質フィナステリドの性機能への副作用について、利き手との関連を検討するパイロットスタディが、ルーマニア・St Pantelimon HospitalのIon G. Motofei氏らによって行われた。フィナステリドの性機能への影響を検討している研究は他にもあるが、本研究は、フィナステリドの薬理学的作用によるジヒドロテストステロン抑制反応について、大脳側性化/専門化の影響との関連で検討している点で、それらと異なる。大脳側性化/専門化は、身体的・精神的・性的機能は脳内で役割分担して司っているという神経生理学の考え方で、利き手や認知型、生殖ホルモンの影響や性的好みも含め、それらの違いは大脳側性化で明らかにできると目されている。そこで研究グループは、フィナステリドによる性的反応と、利き手との関連に着目して検討した。BJU International誌オンライン版2012年11月16日号の掲載報告。
フィナステリドの薬理学的作用による、ジヒドロテストステロン抑制、性的興奮、リビドーと、利き手との関連を調査することを目的に、壮年性脱毛症の治療を受けている男性の自己申告による性的反応を、治療前と治療中(壮年性脱毛症のためのフィナステリド1mg治療開始前後)で比較した。
試験に参加したのは、計33例の性的に健常なルーマニア男性で、前向きに4週間、性的機能に関する情報[国際勃起機能指標(IIEF)で測定]が提供された。利き手によりグループ分けし、個別に影響を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・IIEFはトータルスコア、および勃起機能、オルガスム機能、性的欲望とも治療前後、治療効果によるグループ間で同程度の得点であった。全体的満足度のサブスケールも同様であった。性交満足感のサブスケールは、グループ間、治療効果によるグループ間で同程度であった。
・大半のサブスケールについて、右利きの男性は、影響なしあるいは性機能低下を報告した。一方で、左利きの男性は主として、影響なしあるいは性機能改善を報告した。
・これらの結果は、ジヒドロテストステロン抑制の性機能への影響が利き手に依存していることを示す。すなわち、認知型に依存している可能性を示すものであり、また、2つの異なる神経内分泌系の性心理軸(neuroendocrine psychosexual axes)があるとの考え方を支持するものである。
・さらには、そうした性機能への影響は、方法論的検討によって十分検出可能であるとともに、患者の性機能への影響に気を配るコミュニケーションによって、より明らかになると示唆される。
(ケアネット)