ヒスタミンは、表皮ケラチノサイト分化を抑制し、皮膚バリア機能を障害するという新たなメカニズムが、ドイツ・ハノーバー医科大学のM. Gschwandtner氏らが行ったヒト皮膚モデルを用いた検討により示唆された。ケラチノサイト分化や皮膚バリアの障害は、アトピー性皮膚炎のような炎症性皮膚疾患の重大な特徴である。研究グループは、マスト細胞とその主要なメディエーターであるヒスタミンが炎症を起こした皮膚細胞に豊富に認められることから、それらが病因に関与している可能性について検討した。Allergy誌2013年1月号(オンライン版2012年11月15日号)の掲載報告。
研究グループは、ヒトの主要ケラチノサイトを、ヒスタミンの有無別による分化の促進状態下で、またヒスタミン受容体作動薬と拮抗薬による分化の促進状態下で培養した。そのうえで、分化に関連する遺伝子および表皮接合タンパク質の発現を、リアルタイムPCR、ウエスタンブロット、免疫蛍光検査ラベリングにより定量化した。
ヒトの皮膚モデルのバリア機能については、ビオチンをトレーサー分子として調べた。
主な結果は以下のとおり。
・ヒトケラチノサイト培養組織および器官型皮膚モデルへのヒスタミン追加により、分化関連タンパク質ケラチン1/10、フィラグリン、ロリクリンの発現が、80~95%低下した。
・さらに、皮膚モデルへのヒスタミンの追加により、50%の顆粒層の減少、および表皮と角質層の希薄化がみられた。
・ヒスタミン受容体H1R作動薬2-pyridylethylamineのケラチノサイト分化の抑制は、ヒスタミンと匹敵するものであった。
・同様に、ヒスタミン受容体H1R拮抗薬セチリジンは、ヒスタミンの作用を実質的に排除した。
・タイトジャンクションタンパク質(TJP)のzona occludens-1、occludin、claudin-1、claudin-4)、およびデスモソーム結合タンパク質のcorneodesmosin、desmoglein-1はともに、ヒスタミンによって減少した。
・トレーサー分子のビオチンは、ヒスタミンの発現が大きかった培養皮膚バリアのタイトジャンクションを容易に通過した。しかし、無処置のコントロール部分では完全に遮断された。
(ケアネット)