2013年11月にC型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂―新薬登場で

提供元:ケアネット

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公開日:2013/10/09

 

 2013年10月3日(木)、ヤンセンファーマ株式会社主催のC型慢性肝炎メディアセミナーが開催され、関西労災病院 病院長の林 紀夫氏より、C型慢性肝炎治療の変遷と最新治療について語られた。また、東京肝臓友の会 事務局長の米澤 敦子氏からは、患者が考えるC型肝炎治療の課題について語られた。

 林氏は「11月に発売される新規DAAs(direct-acting antiviral agents:直接作用型抗ウイルス薬)シメプレビルの登場により、C型肝炎治療ガイドラインが大幅に改訂される。未治療例はもちろん、高齢者やインターフェロン(IFN)無効例、過去の治療で効果が十分に得られなかった例にも、有効性と安全性が高く、治療期間の短い新たな治療選択肢を提供できる」と述べた。

 今後は、シメプレビルのほかにも現在開発中の新薬が続々と登場し、日本のC型肝炎治療に大きな変革がもたらされると考えられる。

C型肝炎は肝がんの主な成因
 日本における肝がんの死亡者数は、肺がん、胃がんに続いて3番目に多く、年間約3万人が肝がんにより死亡している(厚生労働省調べ)。C型肝炎ウイルスに感染すると、約70%の患者が、慢性肝炎から肝硬変、そして肝細胞がんへ至る。日本肝臓学会の肝がん白書(1999)によると、日本における肝硬変・肝がん患者の79%がC型肝炎ウイルス陽性であるという。つまり、C型肝炎のウイルス排除を進めれば、肝がん患者の減少につながるといえる。

これまでのC型肝炎治療
 C型肝炎の治療はIFN 単独、IFN+リバビリン(RBV)、ペグインターフェロン(PEG-IFN)+RBVと進化を遂げてきたが、日本人に最も多い遺伝子型1b型にはIFNが効きにくく、PEG-IFN+RBV併用療法を48週行っても、初回治療の著効率は約50%であった。また、米澤氏は「治療期間が長期にわたるため、IFNの副作用である発熱や倦怠感、RBVによる貧血などにも長く悩まされ、治療を続けるために仕事をリタイアせざるを得ないなど、患者の人生を大きく左右させてしまう」という問題点を挙げた。

テラプレビル3剤併用療法の問題点
 2011年9月に承認されたPEG-IFNα-2b+RBV+テラプレビル(TVR)の3剤併用療法により、ウイルス陰性化率(SVR)が飛躍的に向上し、治療期間も従来の48週から24週に大幅短縮された。しかし、TVRは高い頻度で皮疹や貧血などの副作用を伴うことから、肝臓専門医や皮膚科専門医との連携ができる医療機関に使用が限定された。とくに、副作用が出やすい高齢者には使いにくく、治療を中断せざるを得ないなどの問題点があった。

シメプレビルの登場
 第2世代のプロテアーゼ阻害剤シメプレビルは、優先審査を経て2013年9月に日本で承認された。C型肝炎治療薬としては初めて、欧米に先駆けて承認された期待の薬剤で、2013年11月にも発売される見込みである(製品名:ソブリアードカプセル)。未治療の遺伝子型1のC型慢性肝炎患者を対象に行われた国内第3相試験(CONCERTO試験)においては、シメプレビル+PEG-IFNα-2a+RBVの3剤併用療法(24週)の投与終了後12週までの持続的ウイルス陰性化率(SVR)が88.6%にのぼった。投与終了後24週までのSVRも再燃例で89.8%、無効例で50.9%と、高い有効性が認められた。また、安全性もPEG-IFN+RBVの2剤併用療法と同等であった(第49回日本肝臓学会総会にて発表)。

2013年11月、C型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂
 現在のC型肝炎治療ガイドラインにおいて、遺伝子型1における治療は原則として「TVR+PEG-IFN+RBV」または「PEG-IFN+RBV」とされているが、シメプレビルの登場により、2013年11月に改訂され、これらは「シメプレビル+PEG-IFN+RBV」に変更となる見込みである。1日1回の服用でTVRよりも有効性と安全性が高いシメプレビルが、今後のC型肝炎治療に大きな変革をもたらすと考えられる。

今後も新薬が続々登場
 現在、国内で開発されている新規DAAsとPEG-IFN+RBVの3剤併用療法は、シメプレビルのほかにもファルダプレビル、vaniprevir、daclatasvirがあり、いずれも遺伝子型1に対する有効性が80~90%と高く、副作用もTVRと比べて低いという。また、IFNフリー療法も開発されており、近い将来、IFNの副作用を懸念することなくさまざまな症例に使用することができるため、期待されている。現在開発中のレジメンは、asunaprevir+daclatasvir、deleobuvir+ファルダプレビル+RBV、sofosbuvir+RBV、ABT450+ABT267+リトナビルであり、いずれも第2、第3相試験中である。「ただし、IFNフリー療法は、IFNの抗ウイルス効果によって耐性株の増殖を抑制することができないため、裾野が広いからといってむやみに使うと耐性変異を起こす危険がある。将来の治療薬に対しての選択肢を奪うこともある」と林氏は注意を投げかけた。

まとめ
 今後、IFNを使わない新しい治療が登場するが、患者の高齢化と発がんリスクを鑑みると、将来の治療のために待機せず、まずは専門医が遺伝子検査などでしっかりと治療方針を決定したうえで「今ある最新かつベストな治療」を行うべきである。また、IFNフリー療法という選択肢が増えても、IFNはすでにDAAsへの耐性を持つ症例の治療効果も高めることができるため、重要な薬剤であることに変わりはないと考えられる。シメプレビル登場に始まるC型肝炎治療の進化により、肝がんで命を落とす患者が減ることが期待される。

(ケアネット 武田 真貴子)