統合失調症の発症は予測できるか、ポイントは下垂体:富山大学

提供元:ケアネット

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公開日:2013/11/11

 

 富山大学の高橋 努氏らは、精神病発症危険状態(at-risk mental state:ARMS)の人においても、統合失調症患者でみられるような下垂体体積の増大が認められることを、MRIを用いた調査の結果、明らかにした。統合失調症で報告されている下垂体体積の増大は、視床下部-下垂体-副腎機能の亢進を示すものとされている。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌2013年11月号の掲載報告。

 研究グループは、ARMSの22例(男性11例、女性11例)と初回エピソード統合失調症患者64例(FE統合失調症群:男性37例、女性27例)、健常対照86例について、MRIを用いて下垂体の体積を調べた。対照群の被験者は、年齢および性を適合させて、ARMS群(男性11例、女性11例)とFE統合失調症群(男性37例、女性27例)に分けられた。
 
 主な結果は以下のとおり。

・ARMS群とFE統合失調症群は、適合対照群と比較して、下垂体体積がより大きかった。
・下垂体体積について、ARMS群とFE統合失調症群の間に差は認められなかった。
・ARMS群とFE統合失調症群いずれにおいても、下垂体体積と臨床変数(スキャニング時の症状、抗精神病薬の1日投薬量または期間)との間に関連性はなかった。
・下垂体体積は、その後に統合失調症を発症したARMS被験者(5例)と、発症しなかったARMS被験者(17例)の間に有意な差はなかった。
・下垂体体積は、全被験者(ARMS群とFE統合失調症群)において、男性よりも女性のほうがより大きかった。
・以上の結果から、ARMSとFE統合失調症の両者において認められる下垂体体積の増大は、精神疾患早期のストレスに対する一般的な脆弱性の指標となる可能性が示唆された。
・大集団ARMSを対象としたさらなる検討を行い、下垂体体積と精神疾患発症との関連について調べる必要がある。

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(ケアネット)