日本人多発性硬化症患者における認知機能障害の関連要因は:北海道医療センター 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/01/27 多発性硬化症(MS)患者では認知機能障害がQOLに影響を及ぼしていること、また認知機能は抑うつや疲労感などと相関している可能性が示唆されていた。国立病院機構北海道医療センター臨床部長の新野 正明氏らは、日本人MS患者の認知機能障害について調べ、認知機能と無気力、疲労感、抑うつとの関連について評価を行った。その結果、同患者ではとくに情報処理速度の障害がみられ、認知機能障害が無気力や抑うつと関連していることなどを明らかにした。BMC Neurology誌2014年1月6日号の掲載報告。 患者184例と健康対照(年齢、性、教育レベルで適合)163例について、Brief Repeatable Battery of Neuropsychological(BRB-N)テストを行い、また、Apathy Scale(AS)、Fatigue Questionnaire(FQ)、ベックうつ病評価尺度第2版(BDI-II)を用いて評価を行った。両群の比較にはt検定を用いた。ピアソン相関分析にて2因子間の相関性を検討し、重回帰分析にて各因子がBRB-Nスコアに及ぼす影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・患者184例(うち女性135例)は、全国18施設から登録され、平均年齢は39.3歳(SD 10.1歳)、罹病期間は平均9.3年(SD 7.2年)、神経症状評価尺度(EDSS)は2.38(SD 2.04)であった。 ・BRB-Nテストは9項目について行ったが、そのすべてにおいて、MS患者群のほうが対照群よりも得点が有意に低く認知機能障害が大きかった。9項目の中では、Symbol Digit Modalities Test(SDMT)の得点差が最も大きかった。 ・AS(p<0.001)、FQ(p<0.0001)、BDI-II(p<0.0001)のスコアは、いずれもMS患者群で有意に高かった。 ・MS患者では、BRB-Nテストの大半のスコアと、ASおよびBDI-IIのスコアに相関が認められた。一方でFQのスコアとは相関がみられなかった。 ・以上のように、日本人MS患者では、認知機能の障害、とくに情報処理速度の障害がみられ、認知機能の低下と無気力、抑うつとが関連していた。ただし認知機能は、無気力/抑うつによる影響以上の低下がみられた。一方で、主観的疲労感と認知障害には関連がみられなかった。 ・これらの結果を踏まえて著者は、「MS患者の主観的疲労感や認知機能を改善しQOL向上を図るためには、それぞれ異なる治療アプローチが必要であることが示唆された」とまとめている。 関連医療ニュース てんかん合併アルツハイマー病患者、より若年で認知機能が低下 多発性硬化症とてんかんの併発は偶然ではない!? −大規模人口ベースの記録照合研究より 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学 (ケアネット) 原著論文はこちら Niino M et al. BMC Neurol. 2014 Jan 6;14(1):3. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 2型DMの血糖コントロールなど、予測モデルによる治療最適化で改善/Lancet(2025/03/10) 切除不能進行胃がん1次治療、sugemalimab追加でOS・PFS改善(GEMSTONE-303)/JAMA(2025/03/10) TTF-1陰性Non-Sq NSCLCに対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(LOGIK2102)/日本臨床腫瘍学会(2025/03/10) 統合失調症の認知機能改善に対するメトホルミンの有用性(2025/03/10) EBウイルスが腎移植後のリンパ増殖性疾患に関与(2025/03/10) うつ病歴は慢性疾患の発症を早める(2025/03/10) 症状を電子的に報告するシステムががん患者の症状管理やQOLを改善(2025/03/10) 「善玉」コレステロールは緑内障リスクを高める?(2025/03/10) [ あわせて読みたい ] 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24) 松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20) マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<上巻>(2012/12/01) マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<下巻>(2012/12/01) Step By Step!初期診療アプローチ<第3巻> 【神経症候シリーズ(前編)】(2012/12/01) Step By Step!初期診療アプローチ<第4巻> 【神経症候シリーズ(後編)】(2012/12/01) カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<上巻>(2012/12/01)