精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所

提供元:ケアネット

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公開日:2014/02/26

 

 理化学研究所 脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームの窪田 美恵氏らは、気分障害および統合失調症におけるグルタミン酸受容体のADAR2とRNA編集(RNA editing)の役割を明らかにした。両者の剖検脳から、気分障害および統合失調症ではADAR2発現の低下が認められ、同低下がAMPAグルタミン酸受容体でのRNA編集の減少と関連していることが示唆されたという。これらの所見を踏まえて著者は、「ADAR2発現低下によるAMPA受容体のRNA編集の効率が、精神疾患の病態生理に関与している可能性がある」と述べている。Molecular Brain誌2014年1月号の掲載報告。

 AMPA(2-amino-3-(3-hydroxy-5-methyl-isoxazol-4-yl)-propanoic acid)/カイニン酸グルタミン酸受容体の前mRNAは転写後に修正される。RNA編集として知られるこの修正はADAR2(adenosine deaminase acting on RNA type 2)を介して行われ、受容体のアミノ酸配列と機能が変化する。気分障害や統合失調症で、グルタミン酸シグナルが関与していることは示唆されていたが、AMPA/カイニン酸受容体のRNA編集が病態生理学的に意味を持つのかについては明らかにされていなかった。

 研究グループは、剖検脳(双極性障害例32例、統合失調症例35例、対照群34例)、凍結脳組織片(同11例、13例、14例とうつ病例11例)、またAdar2ノックアウトマウス脳を用いて、ADAR2の発現とRNA編集について調べた。

 得られた主な知見は以下のとおり。

・剖検脳において気分障害や統合失調症患者は、ADAR2発現が低下する傾向があることが判明した。ADAR2発現の低下は、AMPA受容体のR/G部位の編集減少と関連していた。
・へテロ接合型Adar2ノックアウトマウス( Adar2+/-マウス)においても、AMPA受容体R/G部位の編集は減少していた。
Adar2+/-マウスは、オープンフィールド試験で活動性が増加する傾向を示した。また、強制水泳試験では静止に対して抵抗する傾向を示した。また、アンフェタミン誘導の活動亢進もみられた。
・野生型マウスと Adar2+/-マウスにおいて、AMPA/カイニン酸受容体拮抗薬(2,3-dihydroxy-6-nitro-7-sulfamoyl-benzo[f]quinoxaline)投与後、アンフェタミン誘導の活動亢進に有意差はみられなかった。
・著者は、「これらの所見は、全体的に、ADAR2発現低下によるAMPA受容体のRNA編集の効率が、精神疾患の病態生理に関与している可能性を示唆するものである」とまとめている。

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(ケアネット)