若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/06/02 10代の若年発症統合失調症患者では、神経学的ソフトサイン(neurological soft signs:NSS)の有病率およびスコアが高いことが明らかとなった。NSSは、中枢神経系の特定領域を限定せず、また特定の神経症症候群にも属さないわずかな脳の発達障害を示すサインである。一般的に統合失調症のような疾患症例で観察され、とくに18歳未満の若年発症における脳発達モデルの裏付けとなる。実際にNSSは、統合失調症患者における臨床的、認知的、電気生理学的および脳の障害を反映する神経解剖学的なマーカーに属しているという。検討を行ったチュニジア・Razi病院のS. Bourgou Gaha氏らは、「それらは脳の構造的な異常を示すもので、脳の発達障害に帰結し、脳の発達障害に関する病理学的な仮説を裏付けるものである」と述べている。Encephale誌オンライン版2014年5月19日号の掲載報告。 研究グループは、若年発症統合失調症と診断された思春期の患者におけるNSSの有病率、スコア、その後の経過について健常対照との比較を行った。検討では、NSSと人口統計学的・臨床的特性および治療特性との相互関係について調べた。試験は、同院の小児精神科部門で思春期患者12例を集めて行われた。患者はKiddie SAD PL補足版DSM-IVで統合失調症と診断されていた。また、年齢、教育レベルで適合させた、家族に精神疾患患者がおらず本人にも治療歴のない12例の健康対照と比較した。患者の臨床症状は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価を行った。NSSは、Krebs氏らが2000年に行った2群について検討したNeurological Soft Signs Examinationで評価した。尺度は23項目から構成され、運動協調性、運動統合機能、知覚統合、不随意運動と左右の機能分化の質などを調べた。 主な結果は以下のとおり。 ・調査対象者の平均年齢は、14.7歳であった。平均発病年齢は12.2歳で、男女比は1.4対1、教育を受けた期間(レベル)は7.4年であった。 ・PANSS平均総スコアは74.3点であった。 ・抗精神病薬の1日平均投与量(クロルプロマジン換算)は、523.9mg/日であった。4例の患者が、抗精神病薬の単独強化療法を受けていた一方で、その他の患者は2つの神経遮断薬の投与を受けていた。 ・NSSの有病率は100%(カットオフ値11)で、総スコアの平均値は29.3±4.1であった。スコアが最も高かったのは運動協調性であった(10.1)。 ・対照群では総スコアの平均値は7±1.3であった。 ・患者と対照では、すべてのNSSのサブスコアについて非常に有意な格差が認められた。 ・患者において、年齢とNSS総スコア(p=0.05、r=-0.57)、および知覚統合スコア(p=0.04、r=-0.58)との間にいずれも逆相関の関連がみられた。 ・また、NSS総スコアは、教育レベルが低いこととも関連していた(p=0.03、r=-0.61)。 ・NSSスコアとPANSSスコアまたは抗精神病薬の1日投与量との間には、相関性はみられなかった。 関連医療ニュース 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか 双極性障害における神経回路異常が明らかに 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Bourgou Gaha S, et al. Encephale. 2014 May 19. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24) 松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20) カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<上巻>(2012/12/01) カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<下巻>(2012/12/01)