統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/06/18 ガランタミンとメマンチンの組み合わせ治療は、統合失調症の認知機能改善に有効であることが米国・メリーランド大学のMaju Mathew Koola氏らによる検討プロジェクトの結果、示された。両薬の組み合わせが、いずれか一方の単独療法よりも認知機能を選択的に増強するためだという。今回の結果を踏まえて著者は、「将来的には、統合失調のような複雑な疾患の治療では、マルチターゲットの誘発リガンドが役に立つであろう」とまとめている。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年5月27日号の掲載報告。 プロジェクトは、統合失調症における認知機能改善のための調査と治療の研究(MATRICS)および神経認知と統合失調症研究のための治療ユニットプロジェクトで、統合失調症患者の認知機能改善を治療する新薬開発を促すようデザインされたものであった。 主な知見は以下のとおり。 ・MATRICSプロジェクトでは、ドーパミン作動性、コリン作動性、グルタミン酸作動性の3つの作用機序を有する薬剤を特定した。 ・統合失調症を有する人では中程度の認知障害がみられ、それが最も有力な長期アウトカムの予測因子であった。 ・しかし、現状ではこれら認知障害を有する患者に対する承認薬はなく、疾患関連の障害を改善するため新たな薬理学的アプローチの開発は重大である。 ・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)とメマンチンの併用療法は、アルツハイマー型認知症の認知機能改善に、各単独療法よりも有効である。 ・ガランタミンは、単なるAChEIではなく、α4β2とα7のニコチン受容体の陽性アロステリックモジュレータでもある。 ・N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体は、統合失調症の認知症状の病態生理に関連しており、それゆえにメマンチンは認知機能にプラスの影響をもたらす可能性がある。 ・メマンチンは、tonic NMDA currentを減弱し、ガランタミンはシナプス後部のNMDA currentによる活性を増強すると思われる。このことがシグナル転写の増大に結びつき、両薬の併用時にはメマンチン単独よりも、より大きなシグナルノイズ比が発生する。 ・ガランタミンは、α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazol-propionate(AMPA)シグナルを改善することで神経保護を可能としており、また記憶コーディングを改善している可能性がある。 ・以上から、ガランタミンとメマンチンの併用は、いずれか単独よりも選択的に認知機能を増強し、統合失調症における特異的な効果を発揮する可能性が示唆された。 関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン 統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Koola MM, et al. Schizophr Res. 2014 May 27. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 新PCIデバイスbioadaptor、アウトカム改善の可能性/Lancet(2024/11/13) 糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査を用いた検診は胃がん予防に有効か(解説:上村直実氏)(2024/11/13) 市中肺炎の入院患者、経口抗菌薬単独での有効性(2024/11/13) 本邦初、がん患者の「気持ちのつらさ」のガイドライン/日本肺癌学会(2024/11/13) 乾癬への生物学的製剤、真菌感染症のリスクは?(2024/11/13) MCIの認知機能改善に、最適な運動とその量は?~ネットワークメタ解析(2024/11/13) 尿路上皮がん1次治療の更新は30年ぶり、ペムブロリズマブ+EV併用療法とは/MSD(2024/11/13) 米国成人の10人に6人は炎症誘発性の食生活(2024/11/13) 急性白血病の発症時点でさまざまな眼科所見が観察される(2024/11/13) [ あわせて読みたい ] 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24) 松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20) カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<上巻>(2012/12/01) カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<下巻>(2012/12/01)