統合失調症に対する治療の中心である抗精神病薬について、治療ガイドラインでは、有効性に差はないとしている。しかし、臨床的には低力価抗精神病薬は高力価抗精神病薬に比べて有効性が低いと認識されることが多く、また副作用の面でも異なるると言われていた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMagdolna Tardy氏らは、低力価と高力価の抗精神病薬について臨床的有効性の差を明らかにするため、無作為化比較試験のレビューを行った。その結果、臨床的有効性の優劣は明らかでなく、有害事象についてはハロペリドール群で運動障害が、低力価抗精神病薬群で起立性症状、鎮静および体重増加がより高頻度であったことを報告した。Cochrane Database Systematic Review誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。
そこで研究グループは、統合失調症患者に対するハロペリドールおよび低力価抗精神病薬の臨床的有効性についてレビューした。2010年7月までのCochrane Schizophrenia Group Trials Registerを用い、統合失調症または統合失調様精神異常を呈する患者に対し、ハロペリドールと第一世代の低力価抗精神病薬の比較を行っている無作為化試験すべてを検索した。任意にデータを抽出し、intention-to-treatにおけるランダム効果モデルに基づき、二分変数についてはリスク比(RR)とその95%信頼区間(CI)を算出。連続変数についてもランダム効果モデルに基づき、平均差(MD)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・無作為化試験17件の877例についてレビューを行った。試験の対象例数は16~109例の範囲であった。また、いずれの試験も調査期間は2~12週と短期間であった。なお、割付の順番、割付方法および盲検化に関する記載のある報告は少なかった。
・ハロペリドールが、低力価抗精神病薬に比べて臨床的有効性が優れるという明らかなエビデンスは見出せなかった(ハロペリドール40%、低力価抗精神病36%、14試験、574例、RR:1.11、95%CI:0.86~1.44、エビデンスの質:低)。
・何らかの理由で試験から早期脱落した被験者数の差は不明確で、いずれかの群で治療の忍容性にベネフィットがあるという明らかなエビデンスも見出せなかった(同:13%、17%、11試験、408例、0.82、0.38~1.77、エビデンスの質:低)。
・1件以上の有害事象発現という点でも、明確な差はみられなかった(同:70%、35%、5試験、158例、1.97、0.69~5.66、エビデンスの質:きわめて低)。
・低力価抗精神病薬群では、鎮静(同:14%、41%、2試験、44例、0.30、0.11~0.82、エビデンスの質:中等度)、起立性症状(同:25%、71%、1試験、41例、0.35、0.16~0.78)および体重増加(同:5%、29%、3試験、88例、0.22、0.06~0.81)を認めた患者の頻度がより高かった。
・一方、「1つ以上の運動障害」というアウトカムに関しては、ハロペリドール群のほうが高頻度であった(同72%、41%、5試験、170例、1.64、1.22~2.21、エビデンスの質:低)。
・死亡またはQOLに関するデータはなかった。
・いくつかのサブグループおよび感度解析において、主要アウトカムは確固たるものであった。
・全体に試験の質が低く、主要なアウトカムのエビデンスの質は中等度から非常に低度までとばらつきがあった。ハロペリドールと低力価抗精神病薬の優劣について明確な結論を得るためには、新規の試験が必要である。
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