統合失調症患者の暴力行為に関連する広範な危険因子について、多くの研究が行われている。しかし、さまざまな社会的・文化的背景に関係する危険因子は不明なままである。千葉大学の今井 淳司氏らは、精神科救急により入院した日本人統合失調症患者における暴力行為に関連する因子を調査し、他の集団研究で見つかった因子との比較を行った。Schizophrenia research誌2014年12月号の報告。
統合失調症患者の暴力行為は統合失調症自体の要素と関連
対象は、1986~2005年に暴力行為のため東京の精神科救急により入院した日本人統合失調症患者420例。性別、年齢、入院年でマッチした非暴力的な統合失調症入院患者をコントロール群として比較した。すべての医療記録をレトロスペクティブに検討した。評価のために、評価者間信頼性試験が実施された。暴力に関連する因子を特定するために、条件付きロジスティック回帰分析を用いた。
統合失調症の暴力に関連する因子を特定する試験の主な結果は以下のとおり。
・統合失調症患者の暴力との関連は、著しい興奮症状、事前の暴力、幻聴、体系妄想、話の矛盾、関係妄想、TCO(Threat-control override)症状、他人との生活、罹病期間の長さにおいて認められた。
・対照的に、反社会的特徴(たとえば、薬物乱用や反社会的エピソードなど)は、統合失調症患者の重大な暴力関連因子ではなかった。
結果を踏まえ著者らは、「日本人統合失調症患者の暴力行為は、反社会的特徴よりも、統合失調症自体の要素と関連していた。この知見は、他国での結果と異なっており、文化や人種を考慮したコホート研究の必要性を示すものである」とまとめている。
(ケアネット 鷹野 敦夫)