術後の栄養管理、診療科ごとの傾向と課題は?

提供元:ケアネット

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公開日:2016/01/26

 

 術後の栄養管理は、患者の回復に大きな影響を及ぼす。2010年より「栄養サポートチーム加算 200点(週1回)」の算定が可能となり、さまざまな病院で栄養サポートチーム(Nutrition Support Team、以下NST)の活動をはじめとした栄養管理に対する関心がますます高まっている。

 そこで、今回は稲葉 毅氏(帝京大学医学部附属病院 外科)らによる、NSTなどの活動を通じて明らかになった各診療科の栄養管理における傾向と課題、さらにNSTの関わり方を考察した論文「外科系病棟の栄養管理 ―診療科による栄養管理の相違―」1)を紹介する。

 著者の勤務する大学病院では、2006年にNSTが設置されたが、NSTへのコンサルト数は十分とは言えなかった。そこで、2010年度より褥瘡対策チームとの合同回診を開始し、栄養不良状態の患者に対応し始めた。その結果、褥瘡を有する患者には栄養不良患者が多いことが明らかになり、NSTが対応する診療科・症例が増加した。併せて、2008年から参加している欧州代謝栄養学会のnutritionDay栄養調査から、栄養管理のさらに詳しい状況を探ることができた。これらの活動における、従来NSTにコンサルトのなかった診療科との接触を通じて、術後における栄養管理の特色が明らかになった。

内科系・外科系にみられる術後の栄養管理の傾向
 2つの活動から示された、主な診療科における術後の栄養管理の傾向は以下のとおり。

【外科系】
・消化器外科:悪性腫瘍や消化管狭窄などのため、栄養状態不良の患者が多く、積極的な栄養療法が日常的に行われていた。
・脳神経外科:手術後に経腸栄養を投与されているケースが多かった。術後高血糖を考慮し、糖尿病用の栄養剤を多く用いられていた。
・心臓血管外科:栄養過多患者が多く、水分量を厳密に管理される傾向があるため、経腸栄養が必要なケースは少なかった。
・耳鼻咽喉科:咽喉頭がんに対して栄養管理が必要なケースがあり、中心静脈栄養や末梢静脈栄養で対応されていた。また、経管栄養には習熟していない印象であった。

【内科系】
・神経内科:胃瘻を造設するケースが多く、経管栄養を積極的に用いる傾向にあった。しかし、栄養投与量は他科に比べて低かった(成人男性で900kcal/day程度であった)。
・血液内科・呼吸器内科:慢性的に栄養不良な患者が多いが、基本的に経口摂取可能であるため栄養補助療法が十分に行われていない傾向にあった。

各診療科における術後の栄養管理の課題とは
 さらに、著者は、各診療科において、患者の性質ごとに術後の栄養管理の課題が存在することを指摘した。

 まず、内科系の診療科は、実際の摂食量にかかわらず、入院時に設定されたエネルギー制限食が漫然と投与されているケースがみられる。これに対して、外科系の診療科は、こうした漫然とした投与は少ないものの、中心静脈栄養使用時の脂肪製剤投与不足や、経腸栄養使用時の微量元素製剤の投与欠如などがみられる。

 そのうえで著者は、今後このような問題症例をどのように発見していくかが課題であると強調した。さらに、NSTは自施設における各診療科の各特長を踏まえたうえで、各科の栄養治療法を学びながら栄養管理を進めていく必要があると考察した。

 原著には、より詳細な調査結果や考察が記載されている。術後の栄養状態が不良な患者を抱えている先生方にはぜひ一読いただき、NSTへのコンサルトを含めた栄養管理方法を改めて検討していただきたい。

(ケアネット 中野 敬子)

原著論文はこちら

1)稲葉 毅ほか. 日外科系連会誌. 2012;37: 753-759.