HAE、知らないと命を落とす危険性も

提供元:ケアネット

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公開日:2016/05/09

 

 体のさまざまな部位に発作性の浮腫が繰り返し生じる疾患、遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:HAE)。このHAEをテーマにしたプレスセミナーが、4月26日、CSLベーリング株式会社の主催により都内で開催された。

原因不明の浮腫、医師も原因に気付かない

 本セミナーではまず、医師でありHAE情報センター顧問の大井 洋之氏が「日本におけるHAE啓発活動の経緯と現状」と題して講演を行った。
 HAEは補体成分C1インヒビター(C1-INH)の遺伝子異常が原因で、7~8割に家族歴がみられるという。顔面や口唇、四肢などの体表面、消化器、喉頭部などに痛みを伴わない浮腫の急性発作が生じ、浮腫の生じた部位により消化器症状(腹痛、吐き気、下痢など)や呼吸困難を来す。血液検査で鑑別でき、C1-INH製剤による補充療法など有効な治療法もあるにもかかわらず、臨床現場での疾患認知度が低いため、診断に至らず長年こうした症状に苦しむ人が多いのだという。

診察時に診断名が思い浮かぶかどうか

 大井氏は2008年にHAEの啓発活動に取り組み始めた。全国の救命救急センターを対象にした当時のアンケート調査の結果によると、HAEを知っていると答えた医師は回答者計4,490人のうち全体で44.8%であった。さらに、今考えるとHAEであったと思われる症例を経験したと回答した医師が全体の11.5%で、その症例数はのべ638例であった。喉頭浮腫による気道閉塞から命を落とす可能性もあるため、救命救急科で41.3%と認知度が低いことはとくに問題である、と大井氏は指摘する。知ってさえいれば鑑別、治療ができることから、まずはHAEという疾患を広く知らせることが急務であろう。

 認知度の低い理由に、発作が起きても数日で症状が消失するため診断されないまま放置される例が多いことなどがある。また、単独の症状のみを診断の材料にすることもHAEの診断に不利であるという。

 大井氏は過去の活動経験から、インターネットを介した情報提供がHAE診断率の向上にとくに有効であることを強調し、今後も多方面から情報を発信しHAE認知度向上のための活動を行っていく決意を表した。

HAE患者の自立を目指して

 続いて、HAEの患者や家族などが参加するNPO法人HAEジャパンの理事長、山本ベバリーアン氏が講演を行い、患者としての疾患との向き合い方などを語った。山本氏自身、HAEを発症してから診断されるまでの約40年の間、頻繁な発作、誤診に伴う治療による体調悪化などに苦しんだという。現在は患者としての立場からHAEの啓発活動を行っており、最終的にはC1-INH静注製剤の自己所有、自己投与が認められる治療環境を整え、患者の自立を実現することが目標である、と同氏は述べた。

 5月16日は世界国際患者会HAEiが定めた“HAE DAY”であるが、今年、日本記念日協会の記念日にも登録された。患者が笑顔でメッセージを発し、世界の患者と笑顔の輪を広げていく活動を象徴する日にしたい、と山本氏は講演を締めくくった。

(ケアネット 河野 祐子)