遺伝性血管性浮腫の発作予防、新規血漿カリクレイン阻害薬が有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/08/06

 

 開発中の経口血漿カリクレイン阻害薬BCX7353は、プラセボに比べて遺伝性血管性浮腫の発作の発生率が低く、良好な予防効果を発揮することが、ドイツ・フランクフルト大学のEmel Aygoren-Pursun氏らが行ったAPeX-1試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年7月26日号に掲載された。遺伝性血管性浮腫は、生命を脅かす疾患であり、カリクレイン-ブラジキニンカスケードの過剰な活性化をもたらすC1インヒビター(C1エステラーゼインヒビターとも呼ばれる)をコードする遺伝子変異により発症する。BCX7353は、血漿カリクレインの強力な経口小分子阻害薬で、血管性浮腫の発作の予防に有効な可能性を示す薬物動態および薬力学プロファイルを有するという。

遺伝性血管性浮腫患者にBCX7353の4種類の用量の効果をプラセボと比較

 本研究は、遺伝性血管性浮腫とC1インヒビターの欠損がみられる患者において、BCX7353の安全性と有効性を評価する3部構成の二重盲検無作為化プラセボ対照用量反応第II相試験である(BioCryst Pharmaceuticals社の助成による)。

 対象は、年齢18~70歳のI型またはII型遺伝性血管性浮腫で、スクリーニング前の6ヵ月以内に、3ヵ月連続で月に2回以上の発作がみられた患者であった。

 被験者は、BCX7353の4種類の用量(62.5mg、125mg、250mg、350mg)またはプラセボを1日1回投与する群にランダムに割り付けられ、28日間の血管性浮腫の発作の予防効果が評価された。

 主要有効性エンドポイントは、確認された血管性浮腫の発作の回数とした。主な副次エンドポイントは、解剖学的部位別の血管性浮腫の発作、QOLなどであった。

 試験は2016年8月に開始され、2017年8月に最後の患者の観察が行われた。欧州、カナダ、オーストラリアの26施設に77例(BCX7353 62.5mg群:7例、125mg群:14例、250mg群:15例、350mg群:18例、プラセボ群:23例)が登録され、75例が実際に試験薬の投与を受け、72例が試験を完遂した。

血管性浮腫発作発生はBCX7353が125mg/日以上の用量で有意に低かった

 BCX7353とプラセボの5つの群のベースラインの平均年齢(38.9~48.1歳)や血管性浮腫発作発生(0.90~1.15回/週)は全般的にバランスが取れていたが、女性の割合(47~86%)にばらつきがみられた。

 週当たりの血管性浮腫発作発生(最小二乗平均値)は、62.5mg群0.85、125mg群0.25、250mg群0.53、350mg群0.52で、プラセボ群は0.95であった。プラセボ群との差は62.5mg群-0.10(95%信頼区間[CI]:-0.52~0.32、頻度差:-10.5%、p=0.64)、125mg群では-0.70(-1.03~-0.37、-73.8%、p<0.001)であり、250mg群-0.42(-0.76~-0.10、-44.6%、p=0.01)、350mg群-0.43(-0.74~-0.13、-45.5%、p=0.006)と、BCX7353が125mg/日以上の用量で発生が有意に低かった。

 末梢における週当たりの血管性浮腫発作発生も、プラセボ群に比べBCX7353が125mg/日以上の用量で有意に低かった(プラセボ群と125mg群の最小二乗平均値の差:-0.49[95%CI:-0.76~-0.22]、250mg群:-0.41[-0.68~-0.14]、350mg群:-0.45[-0.70~-0.20])が、腹部の発作発生はすべての用量で有意な差は認めなかった。無発作の患者の割合は、125mg群(プラセボ群との差:34%[5~62])と350mg群(30%[4~55])でプラセボ群よりも有意に高く、無発作日の割合はBCX7353が125mg/日以上の用量で有意に高かった(プラセボ群と125mg群の最小二乗平均値の差:18.1[8.1~28.0]、250mg群:14.0[4.1~24.0]、350mg群:9.8[0.6~19.1])。

 QOLスコアは、125mg群および250mg群で有意なベネフィットが認められた(p<0.05)。BCX7353群で最も多く報告された有害事象は消化器系有害事象で、多くがGrade1であり、とくに高用量の2つの群で多かった。

 著者は、「発作発生には、明確なU字型の用量反応関係が認められ、125mgの治療効果が最も高かった。250mgと350mgでは、消化器系有害事象が発作の早期症状と誤認され、そのため効果がマスクされた可能性がある」とし、「短期的なカリクレイン阻害による血管性浮腫発作の予防における、BCX7353経口投与の概念実証および用量反応関係の双方が確認された」と結論している。

(医学ライター 菅野 守)

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