視覚機能が低下したロービジョン(LV)高齢者を対象に、基本的なデバイス使用のLVケア介入と、そこにリハビリテーションを併用する介入(LVR)の有用性を、無作為化臨床試験で比較検討した結果が報告された。結果は、LVRの有効性が顕著だったのは最良矯正遠見視力(BCDVA)が20/63~20/200の患者においてのみであることが示されたという。米国・エドワード退役軍人病院のJoan A. Stelmack氏らが明らかにしたもので、著者は、「多くを占める視覚障害が軽度のLV患者は、基礎的なLVケアで十分のようだ」とまとめている。JAMA Ophthalmologyオンライン版2016年12月15日号掲載の報告。
研究グループは2010年9月27日~2014年7月31日に、黄斑疾患を有しBCDVAが20/50~20/200の退役軍人323例(男性97.2%、平均[±標準偏差]80±10.5歳)を対象に無作為化臨床試験を行った。偏心視および環境改良についての指導や自宅での実践を含めたリハビリテーションとともにLVデバイスを使用するLVR群と、リハビリテーションなしでLVデバイスを用いた介入を行う基礎的LV群に被験者を無作為化し、介入前後に評価者盲検にて電話によるアンケート調査を行った。
評価項目は、退役軍人ロービジョン視覚機能調査票(VA LV VFQ-48)の回答から推定した視覚機能(総合および4つの機能ドメイン)の4ヵ月後におけるベースラインからの変化量、ならびにMNREADを用いた最大読書速度、臨界文字サイズ、読書能力に関する介入終了時におけるベースラインからの変化であった。視覚機能はロジット(対数オッズ)を算出し評価した(0.14ロジットの変化は、視力の1列の変化に相当する)。
主な結果は以下のとおり。
・基礎的LVは、視覚機能の改善に有効であることが示された。
・基礎的LVとの比較で、LVRの有意な機能改善は、移動を除く各機能ドメインで示された。両群差は、読字能力0.34ロジット(95%信頼区間[CI]:0.0005~0.69、p=0.05)、視覚情報処理0.27ロジット(0.01~0.53、p=0.04)、視覚運動能力0.37ロジット(0.08~0.66、p=0.01)、総合0.27ロジット(0.06~0.49、p=0.01)であった。
・また、LVRは、読書能力(群間差:-0.11 logMAR、95%CI:-0.15~-0.07、p<0.001)、最大読書速度(平均増加21.0字/分、95%CI:6.4~35.5、p=0.005)を有意に改善することが認められたが、臨界文字サイズについての改善はみられなかった。
・層別解析において、BCDVAが20/63~20/200の患者は、LVR群のほうがLV群と比較して、読字能力、視覚運動能力および総合の視覚機能の改善が大きかった(それぞれ群間差は、0.56ロジット、0.40ロジット、0.34ロジット)。しかし、BCDVAが20/50~20/63の患者は、LVR群とLV群で有意な差はなかった。
(ケアネット)