血清脂質レベルはうつ病や自殺念慮と関連しているといわれているが、これらの正確な関連はよくわかっていない。韓国・カトリック大学校のJihoon Oh氏らは、大規模サンプルにおける脂質レベルと自殺念慮を伴ううつ病との関連を調査した。Journal of affective disorders誌オンライン版2017年2月6日号の報告。
韓国の全国サンプルより、血清脂質レベルとPHQ-9(Patient Health Questionnaire 9)を用いて測定した軽度うつ病との関連を調査した。第6回韓国国民健康栄養調査(KNHNES VI)に参加した男性2,055人、女性2,894人のデータを使用した。高比重リポタンパクコレステロール(HDL-C)、低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド、総コレステロールの血清濃度で二分し、分析にはコンプレックスサンプルのロジスティック回帰を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・うつ病は、成人男性では高HDL-C(40mg/dL以上)、成人女性では高トリグリセリド(150mg/dL以上)と有意な関連が認められた。
・中年(45~64歳)では、うつ病の増加(OR:2.20、95%CI:1.26~3.85)および自殺率の増加(OR:3.66、95%CI:1.41~9.51)は、高トリグリセリドと関連していた。
・異常な脂質レベルの増加は、女性(OR:1.34、95%CI:1.12~1.60)および中年(OR:1.43、95%CI:1.12~1.82)のうつ病有病率の増加と関連していた。
著者らは「本研究は、断面研究デザインであるため、脂質レベルとうつ病の因果関係を調べることは困難であり、自殺率の評価にはさらなる検証が必要である」としながら、「大規模サンプルデータにおいて、高HDL-C、高トリグリセリドとうつ病との関連が示唆された。トリグリセリドは、若年および中年で自殺率との関連が高かったが、高齢者では異なった。さらなる評価により、民族間での血清脂質レベルと自殺を伴ううつ病との関係を詳細に説明できるであろう」としている。
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(鷹野 敦夫)