2017年6月2~5日、米国シカゴにて米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO 2017)が行われ、HER2陽性の転移を有する未治療の乳がん(MBC)に対する1次治療レジメンを評価した第III相試験であるMARIANNE試験の最終結果が発表された。
MARIANNE試験は、上記の患者に対し3つの抗HER2レジメンが評価された。比較されたレジメンは、トラスツズマブ+タキサン(HT)、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1単独)、トラスツズマブ エムタンシン+ペルツズマブ(T-DM1/P併用)。1,095例(HT群365例、T-DM1単独群367例、T-DM1/P併用群363例)の患者が登録され、これら3つのレジメンに無作為に割り付けられた。
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目は全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など。最初の中間解析において、T-DM1単独群のPFSはHT群に対して非劣性は証明できたものの、優越性は証明できなかった。OSについては各群で同等であった。今学会では、最終妥当性分析からのOSの結果を、ブラジルPUCRS School of MedicineのPorto Alegre氏が報告した。
2016年5月15日のデータカットオフ時点(追跡期間中央値54ヵ月)でのOS中央値は、HT群で50.9ヵ月、T-DM1単独群で53.7ヵ月、T-DM1/P併用群では51.8ヵ月であった。Grade3以上の有害事象はHT群では55.8%、T-DM1単独群では47.1%、T-DM1/P併用群では48.6%であった。T-DM1の安全性プロファイルは、長期間の観察においても当試験の初回解析や先行試験と一致していた。
本研究の結果では、3つのレジメン間でOSの差はみられなかったが、T-DM1単独群ではGrade3以上の有害事象の発現が低い。また、T-DM1単独群では発熱性好中球減少症はみられず、末梢神経障害、脱毛、下痢などの有害事象も他の3レジメンより少なかった。このことから、HER2陽性MBCにおいて、T-DM1単独治療はHTに代わる1次治療レジメンの選択肢の1つであると、発表者のAlegre氏は述べた。
(ケアネット 中野 敬子/細田 雅之)