世界初、大動脈プラーク破綻の撮影に成功

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/06/26

 

 動脈硬化病変である“プラーク”は、破綻により血栓を形成し、心筋梗塞などの致命的な虚血性疾患の原因となりうる。今回、大阪暁明館病院 心臓血管病センターの小松 誠氏らは、血管内視鏡を用いて、大動脈で破綻したプラークの発生、性状、大きさを調べることを目的に研究を行った。

 結果として、大動脈プラークの自然破綻の様子が血管内視鏡の使用により初めて明らかにされ、コレステロール結晶の多彩な形状が実証された。本結果は、論文としてJournal of the American College of Cardiology誌2018年6月26日号に掲載。

 本研究では、冠動脈疾患患者あるいは冠動脈疾患が疑われる患者324例に、血流維持型血管内視鏡を使用した大動脈内部の観察が行われた。その過程で、破綻したプラークの断片を採取し、偏光顕微鏡を用いて微小結晶状物質を分類し、大きさを測定した。

 主な結果は以下のとおり。

・324例中、262例(80.9%)の患者で、自然破綻した大動脈プラークが見つかった。そのうち120例は、横隔膜より下位で破綻していた。

・96例から482個のサンプルが採取され、アテローム性物質237個(49.1%)、フィブリン244個(50.6%)、マクロファージ111個(23.0%)、石灰化127個(26.3%)が観察された。

・サンプルとして得られたプラーク断片の長さの中央値は254μm、幅の中央値は148μmであった。

・アテローム性物質に含まれるコレステロール結晶は、数層~数十層に折り重なって血中に遊離・飛散する“重層タイプ”と、1枚単位で遊離・飛散する“単層タイプ”があることがわかった。

・アテローム性物質から分離されたコレステロール結晶の大きさは、40μm×30μmであり、ゴースト像の86μm×13μmと比較して、小さい傾向にあった。

 この結果に対し、日本血管映像化研究機構は以下のように解釈している。

 本研究では、プラーク破綻に伴い、大動脈中に飛散する微小コレステロール結晶の性状を、世界で初めて生体内で確認することに成功した。これまで、病理標本のゴースト像(標本を有機溶媒で洗浄した後に観察される、無数の細かい穴)としてしか認識されていなかったコレステロール結晶の、多彩な形状が実証された。

 この遊離コレステロール結晶は、動脈血中のみに存在し、静脈血ではほとんど観察されないことから、末梢組織で濾過され、全身臓器中の毛細血管の塞栓子となっている可能性がある。すなわち、認知症やサルコペニア、慢性腎臓病などにおける虚血性細胞死の起因物質とも考えられ、今後の研究によっては、疾患概念を変える発見になるかもしれない。

■参考
NPO法人 日本血管映像化研究機構

(ケアネット 堀間 莉穂)