デュルバルマブ、切除不能StageIII NSCLCのOS改善(PACIFIC)/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/05

 

 切除不能StageIII 非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療はプラチナ併用化学療法と放射線療法の同時治療である(化学放射線同時療法、以下CCRT)。多くの研究が行われてきたものの、生存アウトカムは改善せず、5年生存率はわずか15~30%である。一方、前臨床試験において、化学放射線療法が腫瘍細胞のPD-L1の発現を増加することが示され、化学放射線療法後のPD-L1阻害薬の可能性が期待されていた。

 そのようななか、切除不能StageIII NSCLCを対象にした、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)によるCCRT維持療法を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験PACIFICが行われた。すでに1つ目の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)が、昨年(2017年)発表され、デュルバルマブがPFSを有意に改善することが示された。今回2つ目の主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な改善が、NEJM誌2018年9月25日号で発表された。

・対象:化学放射線同時併用療法(CRT)後に進行していない切除不能StageIII NSCLC患者
・試験薬:デュルバルマブ10mg/kg、2週ごと12ヵ月
・対照薬:プラセボ、2週ごと12ヵ月
・評価項目:[主要評価項目]盲検独立中央評価委員会判定によるPFS、OS
[副次評価項目]死亡または遠隔転移までの時間、2回目の進行までに時間、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・713例が登録され、709例が介入試験の対象となった。そのうち、デュルバルマブ群に473例、プラセボ群に236例が割り付けられた。
・追跡期間の中央値は25.2ヵ月(0.2~43.1)であった。
・OS中央値は、デュルバルマブ群は未達、プラセボ群は28.7ヵ月と、デュルバルマブ群で有意に改善した(HR:0.68、99.73%CI:0.47~0.997、p=0.0025)。
・24ヵ月OS率はデュルバルマブ群66.3%、プラセボ群55.6%であった。
・PFSはデュルバルマブ群17.2ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月と、初回報告同様デュルバルマブ群で改善(HR:0.51、95%CI:0.41~0.63)していた。(初回報告のPFS:デュルバルマブ群16.8ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月)
・副次評価項目である死亡または遠隔転移までの時間(TTDM)はデュルバルマブ群28.3ヵ月、プラセボ群16.2ヵ月とデュルバルマブ群で長かった(HR:0.53、95%CI:0.41~0.68)。
・Grade3~4の有害事象はデュルバルマブ群の30.5%、プラセボ群の26.1%で発現した。治療中止に至った有害事象で最も頻度が高かったのは肺臓炎で、デュルバルマブ群では4.8%、プラセボ群では2.6%であった。

 デュルバルマブはプラセボと比較し、有意に切除不能StageIII NSCLC 患者のOSを延長した。

 なお、この試験結果は、同時に第19回世界肺癌学会(WCLC2018)で発表された。

■参考
PACIFIC試験(N Engl J Med. 2017)
PACIFIC試験(Clinical Trials.gov)

■関連記事
デュルバルマブ、StageIII 肺がんCCRT患者のOSを改善/WCLC2018
durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017

(ケアネット 細田 雅之)