統合失調症治療の医療資源利用とコストにおける持効性注射剤と経口剤との比較

提供元:ケアネット

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公開日:2018/12/26

 

 抗精神病薬の使用において、長時間作用型持効性注射剤(LAI)は経口剤と比較し、アドヒアランスの改善や投薬回数の減少により、医療資源利用を減少させる可能性がある。米国・AlkermesのAnkit Shah氏らは、統合失調症と最近診断された患者におけるLAIと経口抗精神病薬の治療パターンについて調査を行った。Advances in Therapy誌2018年11月号の報告。

 MarketScan Multi-state Medicaid databaseを用いて、2011~14年にLAIまたは経口抗精神病薬を投与された18歳以上の統合失調症患者を抽出した。主要アウトカムは、アドヒアランス(PDCの対象となる日数の割合として測定)、継続性、中止、切り替え、医療資源利用率、コストなどの治療パターンとした。コホート間のベースライン特性の違いは、傾向スコアマッチング(PSM)を用いて制御した。アウトカムは、登録後12ヵ月間にわたって評価し、治療コホート間で比較を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・PSM後、LAIおよび経口抗精神病薬コホートのそれぞれに対象患者2,302例が含まれた。
・両コホート間で、PDCまたは治療切り替えの差は認められなかった。
・LAI治療患者は、経口抗精神病薬治療患者と比較し、中止率(46.1% vs.61.6%、p<0.001)、入院回数(0.5回 vs.0.9回、p<0.001)、受診日数(3.9日 vs.6.5日、p<0.001)、ER受診(2.4回 vs.2.9回、p=0.007)が低く、処方調合回数(29.5回 vs.25.3回、p<0.001)が多かった。
・LAI治療患者は、登録後12ヵ月間にわたる経口抗精神病薬コホートとの比較で、毎月の入院コスト(4,007米ドル vs.8,769米ドル、p<0.001)およびER受診コスト(682米ドル vs.891米ドル、p<0.001)が低かったが、毎月の薬剤コスト(1万713米ドル vs.655米ドル、p<0.001)は高かった。
・全体として、フォローアップ期間中の両コホートにおける類似総医療コストは、LAI抗精神病薬で2万4,988米ドル、経口抗精神病薬で2万3,887米ドルであった(p=0.354)。

 著者らは「LAI治療は、経口抗精神病薬治療と比較し、薬物治療の継続率が高く入院回数を減少させる可能性がある。LAIによる薬剤コストの上昇は入院コストの削減と相殺され、経口抗精神病薬治療と比較し、総医療コストの増加を来さない」としている。

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(鷹野 敦夫)