クエチアピン徐放製剤とオランザピンの日本人双極性うつ病に対する有効性の違い

藤田医科大学の岸 太郎氏らは、日本人双極性うつ病患者におけるクエチアピン徐放製剤300mg/日(QUEXR300)とオランザピン5~20mg/日(OLZ)との有効性および安全性の違いについて、比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年7月8日号の報告。
クエチアピンとオランザピンの双極性うつ病患者への有効性に有意差なし
日本におけるQUEXR300とOLZの第III相臨床試験のデータを用いて、ベイズ分析を行った。アウトカムは、寛解率(主要)、奏効率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度および17項目のハミルトンうつ病評価尺度スコアの改善、中止率、有害事象発生率とした。連続データと二値データについて、標準化平均差(SMD)、リスク比(RR)、95%信頼区間(CI)をそれぞれ算出した。クエチアピン徐放製剤とオランザピンの日本人双極性うつ病患者における有効性の違いを比較した主な結果は以下のとおり。
・有効性に関して、QUEXR300とOLZでは有意な差は認められなかった。
・安全性に関しては以下のとおりであった。
●QUEXR300はOLZよりも、傾眠の発生率が高かった(RR:5.517、95%CI:1.563~19.787)。
●OLZはQUEXR300よりも、体重増加が重度で(SMD:-0.488、95%CI:-0.881~-0.089)、血中プロラクチン濃度が高かった(SMD:-0.642、95%CI:-1.073~-0.213)。
●OLZはQUEXR300よりも、HDLコレステロールレベルの減少がより大きかった(SMD:-0.408、95%CI:-0.785~-0.030)。
著者らは「両剤の有効性に違いは認められなかったが、OLZはメタボリックシンドロームのリスクを、QUEXR300は傾眠リスクを上昇させた。本結果を確認するためには、日本人双極性うつ病患者に対する両剤の直接比較試験が必要である」としている。
(鷹野 敦夫)
関連記事

日本人双極性うつ病患者に対するクエチアピン徐放性製剤の長期試験
医療一般 日本発エビデンス(2019/07/19)

日本人双極性うつ病患者に対するクエチアピン徐放性製剤の多施設二重盲検ランダム化比較試験
医療一般 日本発エビデンス(2018/08/30)

急性双極性うつ病に対する非定型抗精神病薬の信頼性は
医療一般(2016/03/11)
[ 最新ニュース ]

FDAへの医療機器メーカーの有害事象報告、3分の1が遅延/BMJ(2025/04/04)

フィネレノン、2型DMを有するHFmrEF/HFpEFにも有効(FINEARTS-HFサブ解析)/日本循環器学会(2025/04/04)

急性GVHDとICANSに対する新たな診断法の開発/日本造血・免疫細胞療法学会(2025/04/04)

市中肺炎へのセフトリアキソン、1g1日2回vs.2g1日1回~日本の前向きコホート(2025/04/04)

抗精神病薬の血中濃度、年齢や性別の影響が最も大きい薬剤は(2025/04/04)

遺伝性消化管腫瘍診療に対する多施設ネットワークの試み/日本臨床腫瘍学会(2025/04/04)

幹細胞治療が角膜の不可逆的な損傷を修復(2025/04/04)

普通車と軽自動車、どちらが安全?(2025/04/04)
[ あわせて読みたい ]
~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15)
Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07)
薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30)
全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31)
ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15)
診療よろず相談TV(2013/10/25)
在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)
「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)
柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)
松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20)