双極性うつ病に対する抗うつ薬の使用は、精神薬理学の中で最も議論の余地がある問題の1つである。抗うつ薬は、双極性うつ病の一部の患者において有用ではあるが、それ以外の患者に対しては使用すべきではないと考えられる。この問題に関して、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のElie Cheniaux氏らがレビューを行った。Expert Opinion on Drug Safety誌2019年10月号の報告。
本レビューでは、双極性うつ病に対する抗うつ薬使用について、公表されている臨床試験を検討し、その臨床的有効性、副作用発現率、躁転、サイクル加速、自殺行動の評価を行った。メタ解析およびレビュー記事についても検討を行った。
主な専門家の意見は以下のとおり。
・双極性うつ病に対して承認されている治療選択肢は、治療反応率がそれほど高くなく、副作用発現率が高かった。
・双極性うつ病に対する抗うつ薬使用の治療反応は、不均一である。
・一部の患者では有意な改善が認められる。しかし、とくに治療誘発性の躁症状を有する患者またはラピッドサイクラーの患者では、躁転やサイクル加速のリスクが高まる。
著者らは「真の問題は、双極性うつ病に対し抗うつ薬を使用すべきかどうかではなく、どの患者で抗うつ薬が有用であるか、どの患者で問題が起こるのかを明らかにすることである。双極スペクトラムの概念や双極性または単極性に関するアプローチが、抗うつ薬の不均一な治療反応を理解するうえで役立つ可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)