経口または長時間作用型持効性注射剤(LAI)の抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の再発を予測するうえで、残存症状の影響はこれまであまり注目されていなかった。慶應義塾大学の齋藤 雄太氏らは、PROACTIVE(Preventing Relapse: Oral Antipsychotics Compared To Injectables: Evaluating Efficacy)研究のデータを用いて、統合失調症の残存症状による再発の予測について検討を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年10月28日号の報告。
統合失調症外来患者305例を対象に、隔週のリスペリドンLAI(LAI-R)群または毎日の経口第2世代抗精神病薬(SGA)群のいずれかにランダムに割り付け、最大30ヵ月間の評価を行った。その後の再発を予測できるベースライン時の症状を特定するために、Cox比例ハザードモデルを用いた。また、研究中に再発を経験した73例について、線形混合モデルを用いて、再発の2~8週前における隔週評価とベースライン評価との症状の比較を行った。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時の誇大妄想のスコアの高さは、その後の再発と有意な関連が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.24、p=0.006)。
・両群をそれぞれ分析したところ、経口SGA群では、ベースライン時の重度の誇大妄想(aHR:1.43、p=0.003)および軽度の幻覚行動(aHR:0.70、p=0.013)が、再発と有意に関連していたが、LAI-R群では認められなかった。
・感情的引きこもりは、ベースライン時と比較し、再発の8週前(p=0.032)および2週前(p=0.043)に有意な悪化が認められた。
著者らは「重度の誇大妄想および軽度の幻覚は、経口抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の再発を予測する可能性がある。また、再発前に悪化が認められる感情的引きこもりは、再発を回避するための有用なマーカーとなりうる可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)