眼の痛みがあったとしても診断時にその訴えがあるとは限らず、併存疾患の多い高齢者ではとくに鑑別が困難だが、頭痛診療で頭に留めておきたい眼疾患がある。第47回日本頭痛学会(11月15~16日)の「頭痛診療のクロストーク・連携」と題したワークショップで、川崎医科大学附属病院眼科の家木 良彰氏が頭痛診療と眼疾患について講演した。
長期間高眼圧が続くと、視神経のダメージは不可逆
はじめに家木氏は、突然の嘔吐と頭痛を訴え受診した80代女性の症例を紹介した。精査加療のため入院し、他疾患による頭痛として退院。退院後も吐き気、頭痛、眼痛が持続するため、10日以上経過後に初めて眼科を受診した。眼圧を測定したところ右眼圧60mmHgで、急性閉塞隅角緑内障と診断。同日中に白内障手術が施行された。
翌日には眼圧が正常化し、頭痛・眼痛・吐き気は改善したが、視力は光覚弁(暗室にて眼前で照明を点滅させ明暗を弁別できる視力で、失明に含まれる)となった。高眼圧が続くことによる視神経のダメージは不可逆であり、「もっと早い眼科受診で失明を回避できた可能性がある。このような症例は、1、2年に1例くらいの頻度で残念ながら遭遇することがある」と同氏。一方で、最初の受診時に眼の痛みや不調に関する訴えがない場合は、眼科疾患の診断が難しいと指摘した。
緑内障のなかでも特殊な病態、急性閉塞隅角緑内障の所見とは
緑内障患者の主な特徴としては、眼圧が高い(ただし眼圧が正常である正常眼圧緑内障患者は日本では多い)、年齢が高い(40歳以上で要注意)、近視が強い、初期には自覚症状がほとんどない、などが挙げられる。40歳以上の日本人における緑内障有病率は約5%とされ、日本人の失明原因の第1位となっている。
このうち、急性閉塞隅角緑内障の病態は少し特殊である。高度眼圧上昇(多くは40mmHg以上)がみられ、症状としては眼痛・頭痛・悪心・嘔吐などがある。緑内障の他の病型と異なり近視よりも遠視の人がなりやすく、虹輪視(電球などを見たときに、その周囲に光の輪のようなものが見える)や霧視(かすみがかって見える)、高度の視力低下がみられる。しかし、とくに高齢者では患者側から自主的にそれらの申告がないこともあり、内科的あるいは脳外科的疾患の誤診につながってしまうことがあるという。
家木氏は、急性閉塞隅角緑内障の鑑別の参考に、近視の場合はほとんどが開放隅角、白内障手術が済んでいたら開放隅角、遠視で背の低い高齢女性に閉塞隅角が多い、といった情報を紹介。診断は眼圧を測定すれば可能であり、たとえ結果が眼科と関係なかったとしても除外診断には役立つため、疑わしい場合は積極的に眼科医にコンサルトしてほしいと話して講演を締めくくった。
(ケアネット 遊佐 なつみ)