ドイツ・ゲッティンゲン大学のCharles Timaus氏らは、2008~12年の境界性パーソナリティ障害入院患者に対する薬理学的治療戦略を評価し、1996~2004年の薬物療法との比較を行った。BMC Psychiatry誌2019年12月12日号の報告。
2008~12年にゲッティンゲン大学医療センターで入院治療を受けた境界性パーソナリティ障害患者87例を対象に、レトロスペクティブに評価を行った。入院治療ごとに、入院および退院時の薬剤を含む向精神薬療法について調査した。2008~12年の処方と1996~2004年の処方の比較を行った。
主な結果は以下のとおり。
・2008~12年に入院治療を受けた境界性パーソナリティ障害の全患者のうち、94%は退院時に1剤以上の向精神薬による治療を受けていた。
・すべてのクラスの向精神薬が使用されていた。
・処方率が高かった薬剤は、naltrexone(35.6%)、クエチアピン(19.5%)、ミルタザピン(18.4%)、セルトラリン(12.6%)、エスシタロプラム(11.5%)であった。
・1996~2004年と比較し、低力価抗精神病薬、三環系/四環系抗うつ薬、気分安定薬の使用が減少した一方、naltrexoneの使用は有意に増加していた。
著者らは「境界性パーソナリティ障害入院患者のマネジメントでは、薬物療法が中心となっている。近年の薬物療法では、古典的な抗うつ薬や低力価抗精神病薬の使用は減少し、クエチアピンが好まれる傾向にあった。また、オピオイド拮抗薬の使用が増加しており、さらなる調査で検討する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)