日本人高齢男性における飲酒と認知機能との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/07

 

 大量の飲酒は、認知機能障害のリスク因子として知られているが、適度な飲酒においても同様の影響が認められるかどうかは、よくわかっていない。これまでの観察研究では、とくに高齢者において、中程度の飲酒による認知機能への潜在的なベネフィットが報告されているが、アジア人ではこの影響が実証されていなかった。滋賀医科大学のAli Tanweer Siddiquee氏らは、認知障害のない日本人高齢男性を対象に、飲酒レベルと認知機能との関連について調査を行った。Alcohol誌オンライン版2020年1月7日号の報告。

 飲酒と認知機能との関連を調査するため、進行中のプロスペクティブ人口ベース研究である滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の断面データを用いた。65歳以上の男性585人を対象に、週ごとのアルコール摂取量の情報を収集し、摂取量に応じて分類した。飲酒歴の分類は、元飲酒者、非常に軽度(14g/日未満)、軽度(14~23g/日)、中程度(24~46g/日)、重度(46g/日超)とした。認知機能の測定には、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・年齢、教育、BMI、喫煙、運動、高血圧、糖尿病、脂質異常症で調整したロジスティック回帰モデルでは、全体および領域特有の認知機能のCASIに、飲酒歴の有無による、有意な差が認められなかった。
・元飲酒者は、非飲酒者と比較し、全体の認知機能(多変量調整平均CASIスコア:88.26±2.58 vs.90.16±2.21)および抽象化、判断の領域(多変量調整平均CASIスコア:8.61±0.57 vs.9.48±0.46)において、CASIスコアが有意に低かった。

 著者らは「日本人高齢男性では、飲酒と認知機能との間に、有益または不利益な影響は認められなかった。しかし、元飲酒者の認知機能が低いことから、飲酒を中止した要因を特定するための今後の調査が必要である」としている。

(鷹野 敦夫)