うつ病の原因リスク遺伝子

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/04/16

 

 うつ病に関連するいくつかの遺伝的変異は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により特定されている。しかし、リスク遺伝子座において関連シグナルの要因となる原因変異を特定することは、依然として大きな課題となっている。中国・Jining Medical UniversityのXin Wang氏らは、うつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年3月15日号の報告。

 Summary data-based Mendelian Randomization(SMR)とPsychiatric Genomics Consortium(PGC)のGWASサマリーおよび脳の発現定量的形質遺伝子座(expression quantitative trait loci:eQTL)データを用いて、その発現レベルとうつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。次に、うつ病の病因におけるリスク遺伝子の潜在的な役割を調査するため、差次的発現解析、メチル化QTL解析、認知ゲノム解析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・SMR統合分析では、ニューロン成長レギュレータ1(NEGR1)遺伝子にあるSNP rs10789336が脳組織のRPL31P12の発現レベルに有意な影響を及ぼし、うつ病リスクに寄与することが確認された(p=0.00000196)。
・SNP rs10789336は、以下の3つの近いDNAメチル化部位のメチル化レベルとの関連が認められた。
 ●cg09256413(NEGR1):p=0.000000000172
 ●cg11418303(プロスタグランジンE受容体3[PTGER3]):p=0.00000478
 ●cg23032215(ZRANB2アンチセンスRNA2[ZRANB2-AS2]):p=0.000123
・差次的発現解析では、NEGR1遺伝子が前頭前野でアップレギュレートされていることが示唆された(p=0.00514)。
・認知ゲノム解析では、SNP rs10789336と関連が認められたのは、以下のとおりであった。
 ●認知能力:p=0.000000000000000241
 ●学歴:p=0.0000000000000175
 ●一般的な認知機能:p=0.00000000000265
 ●言語数値推論:p=0.00000000000136

 著者らは「NEGR1のSNP rs10789336が、うつ病リスクに影響を及ぼす可能性があることが示唆された。うつ病の病因に対するNEGR1の役割については、さらなる調査が求められる」としている。

(鷹野 敦夫)

参考文献・参考サイトはこちら