日本における認知症の重症度と社会的介護コスト

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/10/15

 

 アルツハイマー病患者への直接的な社会的支援のコストは高まっており、高齢化に伴い、今後さらに増加し続けると予想される。藤田医科大学の武地 一氏らは、日本における長期介護保険でのアルツハイマー病に対する直接的な社会的支援のコストを推定するため、検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年9月2日号の報告。

 本研究は、メモリークリニックを受診したアルツハイマー病患者または軽度認知障害患者169例に対し、長期にわたるフォローアップを行った横断的研究である。認知症の重症度、介護サービスの利用、コストについて分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・軽度、中等度、重度の認知症患者の間で、直接的な社会的支援の利用およびコストの有意な増加が認められた(p<0.001)。
・とくに、デイサービスとショートステイサービスの利用は、認知症の重症度とともに増加が認められた(p<0.001)。
・対象患者を長期介護保険の介護レベルで層別化した場合でも、同様の結果であった。
・169例中49例は長期介護保険の申請をしていなかったが、要支援1と要介護1では、認知症の重症度に違いは認められなかった。
・申請しなかった群と申請および認定された群におけるロジスティック回帰分析では、認知症の重症度だけではなく、年齢(OR:1.112、95%CI:1.037~1.193、p=0.003)、居住形態(OR:0.257、95%CI:0.076~0.862、p=0.028)でも有意な差が認められた。

 著者らは「アルツハイマー病の患者数が増加するにしたがって、直接的な社会的コストも増加する。本研究は、アルツハイマー病の診断後に提供される直接的な社会的支援のタイプを標準化することや、費用対効果の高い介護の開発に役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)