統合失調症患者には精神薬理学的治療が不可欠であるが、患者の薬物療法についてのニーズ、好み、不満に関するデータは限られている。さらに、これらの問題に対する精神科医の意識の程度(ニーズのギャップ)を評価する研究はこれまでなかった。東京都済生会中央病院の高橋 希衣氏らは、薬理学的精神科治療の必要性に対する患者と精神科医とのギャップについて調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年6月3日号の報告。
日本人統合失調症患者97例を対象に、精神薬理学的治療に関する必要性や不満、剤形、投与頻度、投与タイミングの好みに関連する多肢選択式の質問から構成された質問票による回答を求めた。さらに、担当の精神科医には、上記質問に対する患者の反応を予測するよう依頼した。
主な結果は以下のとおり。
・精神薬理学的治療の必要性(軽減したいと思った症状)について「とくに何もない」と回答した患者が14例(16.7%)であった。この反応を正しく予測できた精神科医は23.1%であった。
・精神薬理学的治療に関する不満について「とくに何もない」と回答した患者が17例(20.2%)であった。この反応を正しく予測できた精神科医は15.4%であった。
・投与頻度、投与タイミング、剤形に対し患者に最も好まれたのは以下のとおりであった。
●1日1回:56例(65.1%)、正しく予測できた精神科医59.8%
●就寝前:53例(61.6%)、正しく予測できた精神科医54.9%
●錠剤:51例(59.3%)、正しく予測できた精神科医64.6%
著者らは「精神科医が精神薬理学的治療に関する患者のニーズや不満を把握するためには、改善の余地が大きいことが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)