新型コロナウイルスの流行は、感染への不安や恐れもさることながら、さまざまな社会・経済行動の自粛とstay homeによる生活の変化がもたらした緊張やストレスも大きかった。国立成育医療センターは、全国の7~17歳までの子供および0~17歳の子供がいる保護者を対象に、インターネットでアンケートを実施。その回答結果によると、すぐにイライラしたり、自傷や他人への危害といった何らかのストレス反応を呈したりした子供が75%にのぼった一方、保護者の62%が心に何らかの負担を感じていたことがわかり、これまでに経験したことのない自粛生活が親・子の双方に大きく影響を及ぼしていた様子がうかがえる。
本調査は、4月30日~5 月31日、インターネット上で実施された。アンケート内容は、(1)コロナ関連(2)学校・勉強・友人への連絡状況(3)外出頻度・運動・スクリーンタイム・生活リズム(4)子供たちの健康とQOL(5)ストレス反応(6)親子の関わり(7)保護者のメンタルヘルス(8)子供たちが必要としている支援や情報について、などを選択式で回答する項目と、自由記述で構成。2,591人の子供と6,116人の保護者、計8,707人が回答した。
このうち、ストレス反応についての項目で、「最近集中できない」は、小学4~6年生と中学生が40%、高校生が42%だった。「すぐにイライラする」は、小学4~6年生が38%と最も多く、小学1~3年生が33%、中学生が30%、高校生が29%だった。「自分の体を傷つけたり、家族やペットに暴力をふるうことがある」(原文ママ)は、小学1~3年生の16%、小学4~6年生の10%が該当し、中学生・高校生は各5%だった。イライラしたり、暴力的になったりする傾向は低学年ほど強く表れる結果となった。
一方、保護者の回答では、子供に対して「感情的に怒鳴った」が49%と約半数が該当し、とくに年少~年長、小学1年~3年の保護者では6割にのぼった。こうした家庭内のトラブルについて、コロナ流行前の今年1月時点と比べて「少し増えた」「とても増えた」と回答したのは、年少の保護者が45%ともっとも多く、以下、小学1年~3年(38%)、小学4~6年(27%)、未就学児(26%)の保護者の順に多かった。
学校や園の季節休暇以外で、今回ほど長期の休みが続き、外出を制限されるという経験は誰もしたことがなく、在宅ワークが急きょ始まって戸惑う保護者も多かった。こうした状況下で、子供全体の78%が保護者について「一緒にいると安心できる」と回答しているのに対し、保護者のメンタルヘルスを問う6項目の質問について5段階に点数化したところ、全体の62%が中等度(心に何らかの負担がある状況)~極強度(深刻な心の状態のおそれがある)に該当した。家の中で、大人への安心感を感じる子供と、仕事やコロナ感染への不安、子供の教育などに対する情報不足などが相まって大きなストレスを抱えている保護者のあり様が対照的な結果となった。
本調査をまとめた報告書の終わりには、「急性期には目立たなかった影響が、少し時間が経ってから顕在化していることもある。今後もし感染が早期に完全に終息して日常が取り戻されたとしても、子供たちの様子はしばらくの間、注意深く見守る必要がある」と記されている。また、本調査に関し、「より強いストレスや苦しい生活状況に直面している子供や保護者には、本調査の案内が届かなかったり、協力いただけなかったりした可能性もある」とし、国立成育医療センターでは、同調査を今後も継続的に実施する予定だ。
コロナ収束には今しばらくかかる様相だが、学校が再開され、社会が本格的に再稼働し始めた。かかりつけ医の皆さんには、子供や保護者と顔を合わせた際、長い自粛期間を経た後に、心身の小さな変化がないか、注意してみていただきたい。
(ケアネット 鄭 優子)