急性期統合失調症に対するルラシドンの有用性~国内第III相試験のネットワークメタ解析

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/09/10

 

 急性期統合失調症に対するルラシドンの国内第III相試験の結果では、その有効性に一貫性がないことから、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、これらの試験のシステマティックレビューおよびランダム効果モデルネットワークメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年8月7日号の報告。

 日本での急性期統合失調症に対する二重盲検ランダム化試験を分析対象とした。有効性のアウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計、陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度の各スコア、臨床全般印象度(CGI-S)スコアの改善および治療反応率とした。中止率および有害事象の発生率も併せて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・4研究、1,608例が分析に含まれた。
・プラセボと比較し、ルラシドン40mg/日(標準平均差:-0.298、95%確信区間[CrI]:-0.420~-0.176)および80mg/日(標準平均差:-0.170、95%CrI:-0.320~-0.019)は、PANSS合計スコアの有意な改善が認められた。
・ルラシドン40mg/日および80mg/日は、プラセボと比較し、PANSS陽性尺度とCGI-Sスコアの有意な改善を示した。
・ルラシドン80mg/日は、プラセボと比較し、PANSS陰性尺度、総合精神病理尺度のスコアと治療反応率の改善が認められたが、同40mg/日では認められなかった。
・ルラシドン40mg/日は、同80mg/日よりもPANSS総合精神病理尺度スコアの改善が優れていた。
・ルラシドン40mg/日および80mg/日は、プラセボと比較し、アカシジア、傾眠、体重増加の発生率が高かった。
・プラセボと比較し、ルラシドン40mg/日は体重増加の発生率(7%以上)が高く、同80mg/日ではジストニアおよび体重減少の発生率(7%以上)の高さ、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)スコアの上昇が認められた。

 著者らは「日本人の急性期統合失調症患者に対するルラシドン40mg/日および80mg/日での治療は、全体的な症状改善に寄与する。ただし、ルラシドン80mg/日では、錐体外路症状のリスクに注意が必要である」としている。

(鷹野 敦夫)