統合失調症患者は、メタボリックシンドローム(MetS)発症リスクが高い。このことは、心血管疾患の有病率や死亡率の増加と関連している。統合失調症治療に一般的に使用される抗精神病薬は、MetS発症リスクを増加させる可能性が示唆されている。米国・ワシントン大学のGreg W. Mattingly氏らは、抗精神病薬ルラシドン(商品名:ラツーダ)の継続使用またはリスペリドン(商品名:リスパダールほか)からの切り替え使用におけるルラシドンの安全性について評価を行った。また、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)に基づいたルラシドンの長期的な効果についても評価を行った。BMC Psychiatry誌2020年5月5日号の報告。
ルラシドン継続使用またはリスペリドンからの切り替え使用のアカシジア発生率
対象は、ルラシドンまたはリスペリドンによる12ヵ月間の二重盲検比較試験を終了した臨床的に安定した統合失調症患者223例。すべての対象患者は、ルラシドンによる6ヵ月間のオープンラベル試験へ移行した。安全性および忍容性のパラメータには、体重、プロラクチン、代謝関連を含めた。
ルラシドンの安全性について評価を行った主な結果は以下のとおり。
・ルラシドンの忍容性は高く、パーキンソニズム(4.5%)およびアカシジア(3.1%)の発生率は低かった。
・重篤と評価された有害事象の発生率は4.9%と低く、有害事象による治療中止率は、ルラシドン継続群で3.7%、切り替え群で6.9%であった。
・各パラメータのベースライン時から6ヵ月後までの変化は以下のとおりであった。
●平均体重:継続群-0.6kg、切り替え群-2.6kg
●総コレステロール中央値:継続群-4.0mg/dL、切り替え群+4.5mg/dL
●トリグリセライド:継続群-4.5mg/dL、切り替え群-5.5mg/dL
●グルコース:継続群0mg/dL、切り替え群-3.0mg/dL
●プロラクチン(男性):継続群+0.15ng/mL、切り替え群-11.2ng/mL
●プロラクチン(女性):継続群+1.3ng/mL、切り替え群-30.8ng/mL
●PANSS総スコア:継続群+1.0、切り替え群-1.0
著者らは「6ヵ月の延長試験において、ルラシドン治療は一般的に忍容性が高く、体重、代謝パラメータ、プロラクチンに対する影響は最小限であった。リスペリドンからルラシドンへ切り替えた患者では、過去12ヵ月間で増加した各パラメータ値が低下した」としている。
(鷹野 敦夫)