高齢になるにつれ、体重減少や認知機能障害の頻度が高まるが、日本人高齢者の認知症発症リスクに体重変化が関連しているかは不明である。東北大学の陸 兪凱氏らは、中年期以降の長期的な体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査するため、日本人高齢者のコミュニティーベースコホート研究を実施した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年12月26日号の報告。
2006年に65歳以上の障害のない日本人高齢者を対象としたコホート研究を実施した。対象者は、1994年と2006年に自己報告式質問票を用いて体重データを収集し、体重変化に基づき次のように分類した。安定体重(-1.4~+1.4kg)、体重増加(≧+1.5kg)、体重減少1(-2.4~-1.5kg)、体重減少2(-3.4~-2.5kg)、体重減少3(-4.4~-3.5kg)、体重減少4(-5.4~-4.5kg)、体重減少5(≦-5.5kg)。認知症発症は、公的な介護保険データベースより収集した。対象者のフォローアップ期間は、2007年4月~2012年11月の5.7年間であった。認知症発症に関連する多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・3万2,865人年のフォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、564人であった。
・安定体重と比較した、体重減少が認められた高齢者の多変量調整HRは、以下のとおりであった。
●体重減少1:0.97(95%CI:0.70~1.34)
●体重減少2:0.98(95%CI:0.70~1.38)
●体重減少3:1.28(95%CI:0.91~1.81)
●体重減少4:1.27(95%CI:0.92~1.77)
●体重減少5:1.64(95%CI:1.29~2.09)
著者らは「12年間で3.5kg以上の体重減少が認められる日本人高齢者は、認知症発症リスクが高い可能性があることが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)