妊娠および授乳中の女性に対する抗CGRPモノクローナル抗体(erenumab、ガルカネズマブ、fremanezumab)の安全性プロファイルについて、スイス・Institute of Pharmacological Sciences of Southern SwitzerlandのRoberta Noseda氏らが、評価を行った。Cephalalgia誌オンライン版2021年1月12日号の報告。
個別症例の安全性報告を集積したWHOのグローバルデータベースであるVigiBaseより2019年12月31日時点のデータを収集した。
主な結果は以下のとおり。
・安全性報告件数は94件であった。薬剤ごとの安全性報告件数は、erenumabが50件、ガルカネズマブが31件、fremanezumabが13件であった。
・妊娠期や授乳期別の安全性報告件数は、以下のとおりであった。
●妊娠前の薬剤使用時:5件
●妊娠中の薬剤使用時:85件
●授乳中の薬剤使用時:1件
●父親の薬剤使用:1件
●不明:2件
・薬剤使用時のみの安全性報告は51件であった。
・薬剤使用後の安全性報告43件において報告された47件の副作用は、以下のとおりであった。
●母体毒性:18件
●母乳不足:1件
●自然流産:23件
●早産、未熟児:3件
●先天性欠損:2件
・完全なデータベースと比較し、自然流産の不均衡な報告の兆候は認められなかった(報告オッズ比[ROR]:1.46、95%信頼区間[CI]:0.97~2.20)。
・トリプタンを比較対照薬とした場合、抗CGRPモノクローナル抗体(erenumab、ガルカネズマブ、fremanezumab)では、自然流産の不均衡な報告の兆候が認められたが(ROR:1.86、95%CI:1.12~3.13)、交絡安全性報告を除外した後、統計学的に有意な差は消失した(ROR:1.21、95%CI:0.67~2.21)。
著者らは「妊娠および授乳中の女性に対する抗CGRPモノクローナル抗体の使用では、特定の母体毒性、先天性欠損、自然流産の報告増加は認められなかった。しかし、報告された副作用件数は限られており、長期的な安全性データが不足していることから、抗CGRPモノクローナル抗体を妊娠および授乳中の女性に使用する場合には、継続的なモニタリングを行う必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)