高齢者の認知症を予防することは、公衆衛生上の重要な課題である。認知症の予測因子を早期に発見し、是正することは重要であるが、定期的に収集された医療データに基づく認知症の予測因子は、すべて明らかになっているわけではない。京都大学の中奥 由里子氏らは、定期的に収集したレセプトデータを用いて、認知症診断の潜在的な予測因子を調査した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年1月13日号の報告。
新潟県の75歳以上の高齢者を対象に、2012年(ベースライン)と2016年(フォローアップ)のレセプトデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。年齢、性別、診断、処方箋などのベースライン特性に関するデータを収集し、その後の新規認知症診断の潜在的な予測因子との関係を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時に、認知症と診断されていなかった高齢者22万6,738人をフォローアップした。
・認知症と診断された高齢者は、2万6,092人であった。
・交絡因子で調整した後、その後の認知症診断と有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。
●脳血管疾患(オッズ比[OR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.11~1.18)
●うつ病(OR:1.38、95%CI:1.31~1.44)
●抗精神病薬の使用(OR:1.40、95%CI:1.31~1.49)
●催眠鎮静薬の使用(OR:1.17、95%CI:1.11~1.24)
著者らは「定期的に収集したレセプトデータを分析したところ、うつ病、抗精神病薬の使用、催眠鎮静薬の使用、脳血管疾患などの精神神経症状が、新規認知症診断の予測因子であることが明らかとなった」としている。
(鷹野 敦夫)