うつ病や抑うつ症状は、多くの青年や若年成人に影響を及ぼす主な公衆衛生上の問題である。さまざまな研究が行われているにもかかわらず、若者を対象としたうつ病予防プログラムの効果に関する報告は、限定的である。また、うつ病予防プログラムをベースとした若者に対する心理療法は、潜在的に最も重要であると考えられる。メンタルヘルスに不可欠な感情的および社会的スキルを若者が実践するうえで、商用ビデオゲームは魅力的な代替方法となる可能性がある。オランダ・ラドバウド大学のMarlou Poppelaars氏らは、抑うつ症状の悪化を予防するため商用ビデオゲームの可能性について調査を行った。Frontiers in Psychology誌2021年1月12日号の報告。
対象は、抑うつ症状を有する15~20歳の244例(平均年齢:17.11±1.76歳、女性の割合:66.4%)。商用ビデオゲームJourneyのうつ病予防に対する有効性を評価するため、Journey(ソーシャルアドベンチャーゲーム、平均時間:3時間20分)群、Flower(リラックスできる1人用ゲーム:平均時間:2時間36分)群、対照(ゲームなし)群にランダムに割り付け、4週間プレーした。また、ビデオゲームを用いたうつ病予防のための潜在的なアクションメカニズムを調査した。
主な結果は以下のとおり。
・介入後12ヵ月までに、若者の抑うつ症状の変化に対しJourneyをプレーすることの有用性は認められなかった。
・また、Journey特有のアクションメカニズムも認められなかった。
・しかし、研究期間を通じて、対象者の抑うつ症状の軽減、拒否感の低下、希望や楽観性の増加が認められた。
・拒否感または沈思黙考が減少した人、希望や楽観性または気晴らしや問題解決が増加した人では、抑うつ症状の改善が最も高かった。
著者らは「効果的なうつ病予防戦略として商用ビデオゲームJourneyの有用性は示されなかったが、拒否感、希望、楽観性、沈思黙考、気晴らし、問題解決が、今後のうつ病予防のターゲットとなりうる可能性が示唆された。メンタルヘルスを促進するためのゲームに関する今後の研究では、ゲームの潜在的なアクションメカニズムが、誰にどのように効果的であるかを調査するため、慎重に検討した研究デザインが求められる」としている。
(鷹野 敦夫)