日本人は、欧米人ほど肥満度が高くないにもかかわらず2型糖尿病になりやすいことが知られているが、その理由はいまだよくわかっていない。今回、順天堂大学の膳法 浩史氏、福 典之氏ら、および佐賀大学と南カリフォルニア大学などの国際共同研究グループが、大規模コホート調査分析により、日本人男性の2型糖尿病発症に関連するミトコンドリア遺伝子多型を発見した。Aging誌オンライン版2021年1月19日号での報告。
本研究では、日本の多施設共同コホート(J-MICC)佐賀研究、米国の多人種コホート(MEC)研究(日系人を対象)、東北メディカル・メガバンク計画(TMM)コホートの計2万6,994人を対象に、それぞれのコホートにおける日本人に特異的なミトコンドリア遺伝子多型(m.1382A>C)と2型糖尿病の発症率の関連を調査した。メタ分析は、2型糖尿病の発症に関連する年齢とBMIによって調整されたオッズ比を使用して実行された。
主な結果は以下のとおり。
・J-MICC佐賀研究からは男性4,963例と女性6,889例、MEC研究からは男性1,810例と女性1,577例、TMM研究からは男性4,471例と女性7,817例が抽出された。
・メタ分析において、m.1382A>C多型を持つ男性では2型糖尿病の有病率が有意に増加したが(オッズ比[OR]:1.34、95%CI:1.14~1.54、p<0.01)、女性では増加しなかった。
・MEC研究で、男性におけるC型キャリアは、A型キャリアと比較して2型糖尿病有病率が高かった(OR:1.48、95%CI:1.01~2.15、p=0.04)。
・J-MICC佐賀研究で、加速度計に基づく日常活動の測定から、運動量がミトコンドリア多型キャリアの糖尿病リスクに寄与するかを調べた結果、m.1382A>C多型のC型を持つ男性は、身体活動状態に関係なく2型糖尿病のリスクが高い傾向を示した(C型13.1% vs.A型10.8%、p=0.196)。
・ただし、中程度~激しい強度の身体活動が測定されたC型を持つ男性では、2型糖尿病の有病率が上がらなかった(OR:0.98、95%CI:0.956~0.998、p=0.035)。よって、C型キャリアであっても、運動頻度が高い場合は2型糖尿病の発症リスクをキャンセルできる可能性が示唆された。
著者らは、「本研究により、日本人が糖尿病になりやすい一因を説明できる可能性がある。今後、個人の遺伝的体質にあわせた糖尿病の予防や運動療法、新規治療薬の開発につながることが期待できる」と結論している。
(ケアネット 堀間 莉穂)