アルツハイマー病は、社会的費用を増加させ、患者のADLやQOLを低下させる。東京大学の芦澤 匠氏らは、日本の高齢者施設におけるアルツハイマー病の重症度がADL、QOL、介護費用にどのような影響を及ぼすかについて、検討を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌2021年号の報告。
対象は、47の高齢者施設に入所しているアルツハイマー病患者3,461例。患者のADL、QOL、アルツハイマー病の重症度は、それぞれBarthel Index(BI)、EuroQoL-5D-5L(EQ-5D-5L)、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて評価した。年間介護費用は、患者のレセプトデータを用いて推定した。対象患者は、MMSEスコアに従って、軽度(MMSE:21~30)、中等度(MMSE:11~20)、高度(MMSE:0~10)の3群に分類した。3群間の違いは、Jonckheere-Terpstraテストを用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・401例が抗アルツハイマー病薬を使用しており、そのうち287例が調査票に回答を行った(年齢:86.1±6.4歳、女性の割合:76.7%)。287例の重症度別内訳は、以下のとおりであった。
●軽度:53例(年齢:84.0±6.9歳、女性の割合:71.7%)
●中等度:118例(年齢:86.6±5.9歳、女性の割合:76.3%)
●高度:116例(年齢:86.6±6.5歳、女性の割合:79.3%)
・各群のBIスコア、EQ-5D-5Lスコア、介護費用の平均値は、以下のとおりであった。
●軽度:53例(BI:83.6、EQ-5D-5L:0.801、介護費用:211万1千円)
●中等度:118例(BI:65.1、EQ-5D-5L:0.662、介護費用:247万円)
●高度:116例(BI:32.8、EQ-5D-5L:0.436、介護費用:280万9千円)
・アルツハイマー病が重症化すると、BIスコアおよびEQ-5D-5Lスコアが有意に低下し、年間介護費用の有意な増加が認められた。
著者らは「アルツハイマー病の重症度は、ADL、QOL、介護費用などさまざまな影響を及ぼすことが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)