新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の一般向けのワクチン接種が、全国的に始まり、軽微な不備はあるものの、現在は順調に進んでいる。
接種に際しては、会場設営、人口構成、医療者の分布など地域の個々の事情に応じた対応がなされている。
こうした状況の中で、首相官邸の「新型コロナウイルス感染症対策」の特設ページでは、一部の自治体だけでなく、他の自治体でも利用できる活動について収集したものを「ワクチン接種これいいね。自治体工夫集」としてまとめ、公開している。
地域の状況に合わせて工夫する自治体の接種体制
工夫集は「医療従事者確保」「効率的な接種体制」「予約システム、円滑な予約体制」「大規模接種会場」の4つのパートに分かれ、各自治体の取り組みが紹介されている。
【医療従事者確保】(研修医の活用や医師などのチーム編成接種会場の設置、潜在看護師の活用など)
・集団接種会場への研修医の派遣(奈良県)
・医師・歯科医師・看護師の「別動隊」による接種機会の拡大(神奈川県大和市)
・潜在看護師の掘り起こし(滋賀県)
【効率的な接種体制】(予約なしで地区ごとに接種、接種センター作り集中化、地域モデルの共有、医師が巡回して接種など)
・地区ごとの集団接種(福島県相馬市)
・ワクチンの集中管理(岡山県岡山市)
・県内市町村のモデル事例の共有(長野県)
・会場内医師巡回方式の導入(東京都調布市)
【予約システム、円滑な予約体制】(独自のWEB抽選システムで申込受付)
・予約抽選申込方式の導入(兵庫県加古川市)
【大規模接種会場】(地元大学との連携やワクチン接種センターの設置、期間限定の高齢者接種センターの設置など)
・県・市・国立大学の連携によるワクチン接種センターの開設(宮城県・仙台市)
・空港・大学における大規模接種会場の設置(愛知県)
・県営ワクチン接種センターの設置(群馬県)
・大規模接種会場の設置(兵庫県神戸市)
・県高齢者ワクチン接種センターの設置(埼玉県)
いつあってもおかしくないワクチン接種のアクシデントはこれ!
埼玉県戸田市は、一般報道をもとにまとめたワクチン接種現場でのアクシデント事例集を作成し、市内の医療機関に配布した。この事例集は、ワクチン接種に携わる医療従事者向けにまとめられたもので、今後のワクチン接種活動での注意喚起を込め、同市の危機管理防災課が作成した。
アクシデント事例として「ワクチンの使用期限(6時間)の認識不足」、「保管・解凍・搬送に関する認識不足」「希釈・分注に関す認識不足」「バイアルの取り扱いに関する認識不足」「注射器の取り扱いに関する認識不足」「本人確認ミス」に分かれ、現在36項目の事例と原因が記載されている。
具体的事例として、
「ワクチンに生理食塩水を注入する際、量を間違え使えなくなった。原因として調製方法がしっかりと伝わっていなかった」
「中身が空である注射器を誤って接種した。原因として使用済みの注射器を廃棄せずにテーブルに置いてしまった」
「集団接種会場で男性に1日2回接種した。原因として接種の案内係が男性の予診票を確認しなかった。接種した直後に誤りに気付いた」
などが記載されている。
いずれもどこの現場でも起りうる事例なので、先述の工夫集とともに今後の対策に役立てていただきたい。なお、首相官邸の工夫集、戸田市の事例集は今後も随時更新をしていく予定。
(ケアネット 稲川 進)