ヤンセンファーマは5月に多発性骨髄腫の治療薬としてヒト型抗CD38モノクローナル抗体「ダラツムマブ(以下、ダラツムマブ)」を配合した皮下投与製剤「ダラキューロ配合皮下注(以下、ダラキューロ)」を発売開始した。これに伴い6月3日にメディアセミナーを開催し、日本赤十字社医療センターの鈴木 憲史氏が、多発性骨髄腫の基礎知識と新薬が診療に与える影響について講演を行った。
多発性骨髄腫は血液がんの一種で、骨髄にある形式細胞ががん化する疾患。国内における新規罹患者数は7,000人/年程度で、人口10万人当たりでは5.4人となる。診断時の年齢中央値は66歳で罹患率・死亡率とも高齢になるほど増加する。
鈴木氏は「診療をはじめた40数年前、多発性骨髄腫は平均余命3年程度の厳しい疾患だった。それが画期的な新薬の登場で7年程度まで延びてきた」と紹介し、「高齢の患者さんが多く、薬剤は有効性だけでなくQOL維持も重要となる」とした。
ダラツムマブはCD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体で、CD38に結合することによりADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)、CDC活性(補体依存性細胞傷害活性)、ADCP活性(抗体依存性細胞貪食活性)などの免疫系活性を介して抗腫瘍効果を示す。移植非適応患者の1次治療として、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾンの併用療法(DRd)等のレジメンが国内外で推奨治療とされている。
ただ、これまでの点滴薬のダラツムマブの場合、初回7時間、2回目以降4時間程度の投薬時間が必要で、診察等を含めると1日がかりとなり、治療開始時は週1回の投与が必要で患者と医療者の負担が大きかった。ダラキューロの場合、15mlを3~5分かけて皮下注することとなり、診察を含めても半日かからない程度まで短縮できるという。
ダラキューロのダラツブマブに対する非劣性はCOLUMBA試験※により示され、年齢や体重によっても有効性に差は生じず、新規の有害事象も認められなかった。補液量で懸念があった心機能低下患者やフレイルな患者にも投与の可能性が広がる。ただし、副作用が発現するまでの時間はダラキューロのほうが時間がかかる(1.5時間vs.3.6時間)ため、鈴木氏は「初回は入院治療が必要になるだろう」とした。
また、COLUMBA試験参加施設の医療従事者を対象とした追加調査では、点滴から皮下注となったことで医療従事者の関与時間も大幅に減ったとの結果も出ており、鈴木氏は「皮下注への切り替えは患者負担を減らすだけでなく、外来化学療法室の回転を上げ、医療スタッフ業務の効率化につながる可能性も高い」とした。
(ケアネット 杉崎 真名)