統合失調症やうつ病に対する継続的な薬物療法が重要であることは、さまざまなガイドラインで示唆されているが、頓服による治療に関する報告はほとんど行われていない。東京大学の市橋 香代氏らは、向精神薬の頓服使用を行っている統合失調症およびうつ病患者の特徴を明らかにするため、検討を行った。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年1月13日号の報告。
精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のデータを用いて、統合失調症(2,617例)およびうつ病患者(1,248例)の退院時における向精神薬頓服使用の有無、患者の年齢や性別、頓服使用と継続的な向精神薬使用との関連について評価を行った。
主な結果は以下のとおり。
・退院時における向精神薬の頓服使用率は、統合失調症患者で29.9%、うつ病患者で31.1%であった。
・統合失調症患者では、65歳以上の向精神薬頓服使用率が21.6%であり、他の年齢層よりも低かった。
・うつ病患者では、向精神薬頓服使用率が女性で34.2%であり、男性(25.5%)よりも有意に高かった。
・統合失調症患者では、向精神薬の使用と継続的な向精神薬の併用との間に関連が認められた。
著者らは「向精神薬の頓服使用は、統合失調症患者では高齢者で少なく、うつ病患者では女性で多かった。統合失調症患者では、向精神薬頓服使用による向精神薬の多剤併用が認められた。これらのエビデンスを蓄積し、適切な頓服処方に関する知見を共有するためにも、さらなる研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)