慶應義塾大学医学部は、2022年4月12日、同外科学教室の林田 哲氏、北川 雄光氏、同医療政策・管理学教室の宮田 裕章氏、帝京大学医学部外科学教室の神野 浩光氏らの研究グループが開発した、LINEを利用して乳がん患者の健康状態や薬物の副作用情報を収集するePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)取得システムが、効率的な情報収集をしたことを明らかにした。
このePROの取得システムでは、患者のLINEアプリケーションへメッセージが定期的に送信される。患者が簡単なタップ操作でメッセージに返答すると、管理者は、がん治療薬の副作用重症度を国際的指標(PRO-CTCAE)形式で把握することができる。
同システムのフィージビリティ試験として、乳がんの薬物療法を受けている患者にシステムを提供し、利用の継続性や患者情報が良好に取得可能であるかを検討した。
その結果、LINE経由での質問に対する利用者の回答数・回答率は、専用アプリケーションを用いた海外の同様の研究と比較してきわめて高く、また60歳を超える患者も良好な利用・継続が可能であった。
LINEを用いたePROの取得システムは、抗がん剤による重篤な副作用を未然に把握するなど、より安全・安心な新しい形の医療を提供できる可能性が考えられる。
同研究成果は、2022年3月12日にCancer Science誌オンライン版に掲載された。
(ケアネット 細田 雅之)