メタ認知トレーニング(MCT)は、統合失調症患者の精神症状や認知バイアスを改善するためのグループプログラムであるが、入院中の回復初期段階の統合失調症患者への介入効果は、あまりわかっていない。長野県・千曲荘病院の芳賀 彩織氏らは、日本の精神科救急病棟に入院している統合失調症患者の回復初期段階におけるMCTの有効性を調査した。その結果、MCTは精神症状、自己内省の不良、再入院の予防に有効である可能性が示唆された。Frontiers in Psychology誌2022年4月11日号の報告。
20~65歳の統合失調症患者24例を対象に、非盲検パイロットランダム化比較試験を実施した。患者を作業療法(OT)+MCT群とOTのみを行う群(OT群)にランダムに割り付けた。ベースライン時と介入後の認知機能、精神症状、認知的洞察、内発的動機付けの変化を両群間で比較するため、2要因反復測定分散分析(ANOVA)を用いた。さらに、退院後1年間の再入院率を両群間で比較した。
主な結果は以下のとおり。
・一部の患者は本研究から除外されたため、最終分析には各群ともに8例が含まれた。
・ANOVAでは、対象患者のいくつかのドメインで、認知機能に有意な差が認められた。
・対象患者間での有意な差は認められなかった。
・個々の患者において、精神症状の有意な改善が認められ、精神病理学との相互関係が確認された(p=0.03)。
・認知的洞察および自己内省の値は、患者間で有意な違いが認められた(p=0.03)。
・内発的動機付けに有意な差は認められなかった。
・1年以内の再入院率は、OT+MCT群(25%、8例中2例)のほうがOT群(75%、8例中6例)よりも有意に低かった(p=0.046)。
(鷹野 敦夫)