2019年に発生したCOVID-19により人々の行動が変化し、座りがちな行動の割合が増え、うつ病の増加につながっていることが示唆されている。医学生におけるこのような影響は、今後の医療提供体制に負の作用をもたらす可能性がある。広島大学の田城 翼氏らは、日本人医学生を対象にCOVID-19パンデミック中の座位行動とうつ病との関連を調査した。その結果、COVID-19パンデミック下の日本人医学生のうつ病リスクを減少させるためには、座位時間および余暇でのスクリーンタイムの減少が有効である可能性が示唆された。著者らは、これらの結果に基づき、うつ病の予防や治療を行うための適切な介入の開発が求められると報告している。BMC Psychiatry誌2022年5月20日号の報告。
2021年7月30日~8月30日に匿名アンケートシステムを用いてオンライン調査を実施し、日本人大学生1,000人を対象に社会人口統計学的特性、身体活動、座位行動に関するデータを収集。うつ病は、Patient Health Questionnaire-2(PHQ-2)を用いて評価した。484人の回答者データをステップワイズ法で分析し、モデル1として医学生と非医学生の違いを、モデル2としてうつ病を有する医学生と非うつ病の医学生の違いを評価した。両モデルの群間比較には、社会人口統計学的特性ではカイ二乗検定、身体活動および座位行動ではマン・ホイットニーのU検定を用いた。モデル2では、医学生のうつ病に関連する因子を分析するため、ロジスティック回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・モデル1では、医学生は非医学生と比較し、身体活動時間が短く(p<0.001)、座位時間が長く(p<0.001)、PHQ-2スコアが高かった(p=0.048)。
・モデル2では、うつ病医学生は非うつ病医学生と比較し、座位時間が長く(p=0.004)、余暇のスクリーンタイムが長かった(p=0.007)。
・潜在的な交絡因子で調整後のロジスティック回帰分析では、座位時間(OR:1.001、p=0.048)と余暇のスクリーンタイム(OR:1.003、p=0.003)が医学生のうつ病と有意に関連していることが示唆された。
(鷹野 敦夫)