オミクロン流行期、小児コロナ入院患者の症状に変化/国立成育医療研究センター

提供元:ケアネット

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公開日:2022/08/25

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が全国的に猛威をふるっている。一般報道では第7波の特徴として小児の陽性感染が多いことが指摘され、全国の小児科はいつにも増して診療を待つ患者であふれているという。小児がCOVID-19に感染した場合、症状が軽微とあると従来言われてきたが、実際入院した患者ではどのような特徴があるだろう。

 国立成育医療研究センター感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、オミクロン株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株流行期と比較検討し、その結果を公表した。

 この研究は、国立国際医療研究センター運営の国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」利用し、今回初めてわが国の小児COVID-19患者の特徴を、オミクロン株流行期とそれ以前とで比較した大規模な研究となる。

 本研究は、デルタ株流行期(2021年8月~2021年12月)、オミクロン株流行期(2022年1月~3月)に、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例847人(デルタ株流行期:458人、オミクロン株流行期:389人)を対象に実施したもの。その結果、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多かったことが判明した。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期には少なかったこともわかった。

 また、新型コロナウイルスワクチンの接種歴の有無が入力されていた790名に着目してみると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した「より重症と考えられる患者」43名は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていなかったことからワクチン接種が子ども達を重症化から守る方向に働いている可能性があることも示唆された。

オミクロン株流行期では発熱やけいれんが多い

【背景・目的】
わが国におけるオミクロン株流行期の小児COVID-19の臨床的特徴についての情報の解明

【研究概要・結果】
研究対象:2021年8月~2021年12月(デルタ株流行期)と2022年1月~3月(オミクロン株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者
研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、ワクチン接種歴、予後などのデータを集計・分析

【研究結果概要】
・研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株流行期458人、オミクロン株流行期389人。
・入院患者の年齢の中央値はデルタ株流行期が8歳、オミクロン株流行期が6歳。オミクロン株流行期の方が若年化している傾向にあった。
・オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多くあった。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期に少なかった。
・酸素投与を要した患者はオミクロン株流行期に多かったが、人工呼吸管理や集中治療室入院を要した患者の数、割合には大きな変化はなかった。
・新型コロナワクチン2回接種を終えていた患者は、研究対象847人のうち50人(5.9%)だった(接種の有無不明は57人)。この50人は、いずれも軽症だった。
・ワクチン接種歴の有無が判明していた790人の中で、酸素投与、集中治療室入院、人工呼吸管理のいずれかを要したより重症と考えられる患者43人のうち、新型コロナワクチン2回接種を受けていた患者はいなかった。

ワクチンが重症化から子ども達を守る

 これらの研究結果を踏まえ庄司氏らは、「発熱やけいれんが増えていたことは、小児COVID-19の診断を考える上で重要な情報と考えられる。また、小児新型コロナワクチン接種者自体が少ない時期の研究なので限界はあるが、ワクチン接種が子ども達をCOVID-19の重症化から守る方向に働いている可能性を示唆している結果であったことは重要な結果と考える。小児COVID-19の特徴はそのときに流行している変異株により変化しうるので、引き続き情報の収集、解析を続けていくことが重要」と今後の展望を述べている。

※なお、本研究は、オミクロン株(BA.5)流行前に実施されているためその影響は検討できていないこと、また、それぞれの株が国内の主流であった時期の患者を比較した研究であることなど注意を喚起している。

(ケアネット 稲川 進)